第38話 ヒトの生き死に

「あぁ、なんか、ここまで無駄な時間だった。

ちゃんと取材させてもらうわよ。」


「無駄だった、の?」

「俺は久しぶりにえっちゃんと話せて、最高に幸せだよ。」


「私、まことのそういうところ、昔から嫌い!」

「映画の見過ぎ。カッコつけすぎ。

それがカッコ悪いのが、まだわからないのね。」


「そう言って、ツッコミ入れるのが好きでしょ。

えっちゃんは。」


「もぉうぉぅ、お互いのことわかってますぅ!のフリはやめよ!」

「仲良しみたいじゃない!」

「、、、ねぇ、マスター!ほんとは違うのよ!」


少し離れたところで、目で返答しながら、微笑んでいるバーテンダー。


「あなた、半年前に、死にましたぁぁ、のニュースが流れて、

葬儀は近親者で済ませました、って言われて、

何で私は呼ばれないのぉ、って、怒ってるのよ。」

「だいたい、家族も親戚もいないでしょう!?

誰が出席したのよ!?」


「それは、俺も立ち会っていないから、わからない。

もう、死んでいたから。」


「死んだから葬儀したんでしょ。

どうして本人が立ち会わないの!?」


「笑える。ほんと、この状況なら、本人が立ち会うべきだよね。」

「過去のニュースを見直しても、葬儀の具体的な情報は出てこないね。」


「じゃあ、そのあと、どうして私に連絡を取るようになったの?」


「、、、恩返しかな。」

「リークを流して、いつか独占的にネタを使ってもらえれば、って。」

「ちょっと、今回は、予定外だったが。」


「、、、私、初めて連絡をもらった時、

ビデオ通話をした時、

一瞬、死んでないんだ、生きていたんだって、本当に思ったのよ。」

「どれほど、嬉しかったか。」

「でも、実はAIなのです、フェイク動画なのです、

って聞かされて、、、聞かされて、、、。」


人差し指で、越子えつこの頬の涙をそっと拭う美仁有びにゅう


「それでまた、今夜、実体を見せられて、

生きていたんだよ、って聞かされて、、、。」

「それなのに、それなのに、、、

何なのよ!!これ!!一体全体いったいぜんたいぃ!」


静かにグラスを傾ける美仁有びにゅう


「ねぇ、私もジャーナリストの端くれなのよ。

こんなふうにヒトの生き死にがもてあそばれている状況、

、、、絶対に許せない!」

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