【KAC20252】大人のあこがれ

るいす

あこがれ

 子供の頃は、スポーツが好きだった。


 テレビに映る選手が魅力的だったのもあるが体を動かすことの方が好きだったからだ。


 だけど、年を重ねると遊びに変化が出てくる。


 飽きたからとサッカーやバスケットボール、野球など何でもやった。


 そして、あこがれの選手もそれぞれ変わっていった。


 運動神経が良かったからか、みんなから頼りにされて心地よかったことは忘れられない。そうやっていろいろな遊びに手を出していた。時にはスポーツ以外の遊びに変わったが、気にせず遊び続けた。


 そうして気づいたときには、一心不乱に打ち込んできた人との差が出てくる。


 自分はしょせん遊びの一貫で、だけど打ち込んできた人には夢でありあこがれの姿が見えていて。


 そんな人たちに追いつけるはずもなく、ただ何となくあこがれた選手になれない自分に後悔した。


 そうした自分に似た姿を見ないように、いつしか教師を志した。夢を見るには若い方がいいと思い、小学校の先生に決めた。


 そう思ってからは早かった。今まで遊び続けた友達からは急に付き合いが悪くなったといいながら離れていった。私は気にせず勉強をつづけた。


 そして教壇に立つと私は生徒たちに必ず問う。


「皆さんに夢は、あこがれの選手や自分の姿が見えていますか?」


 小学生とは純粋なもので、野球選手やサッカー選手、ケーキ屋さんやお嫁さん。


 そんな答えが返ってくる。


「では、そのあこがれの姿を見つめ続けてください。そして叶えるために諦めないでください」


 そう言うと、生徒たちの反応は分かれる。当然だという子もいれば首を傾げる子もいる。


 そして私は続ける。


「夢は見るだけでは決して叶いません。まずはあこがれの姿を描いて努力しましょう。それを積み重ねた結果がみんなのあこがれの姿になるんです」


 こう言うと子供たちの反応は分かれる。私が少し興奮して話すのが原因なのか泣き出す子も出てくる。こうして私は嫌な、または、意味の分からない先生になるのだ。


 しかし、中には怖いもの知らずなのかこう問うてくる生徒がいる。


「先生のあこがれの姿ってどんななの?」


 そんな質問への答えはあらかじめ決めてある。


「あの時の先生の言葉があるから今の私があります。そう将来言ってもらうことです」と

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