日本魔法少女協同組合(週末更新)

ね子だるま

1節 魔法少女、始めました

第一条 成人男性限定

魔法少女、始めました。


 冷やし中華始めました。みたいなノリでその看板は立っている。

 俺、蝸牛宗則かぎゅうむねのり18歳は大学のガイダンスを受けた帰りにそれを見つけた。

 アニメのキャッチコピーで聞き覚えはあるが、看板にはパステルな美少女イラストもなく、テキストフォントはややおっさん臭い。

「なんだコレ……」


 山ばかりの地元を出て一人暮らしを始めたばかりだが、都会は変なものがいろいろあるものだ。

そう考えながら俺は看板の隣のビルに入る。

 このビルには魔術師の拠点がある。実は俺の家は代々魔術師の家系で、俺もちょっとはその血を継いでいるのだ。もっとも、術は殆ど使えない落ちこぼれだが。

 とはいえ都会では弱い魔術師は何かと危険らしく、俺は父さんに都会の協会に入るように名刺を渡されたのだ。


「えっと……6Fが魔術士協会……ここかな」

 エレベーターで階を上がり、インターフォンを鳴らすと若い女性の声で中に入るよう促される。

 地元は少子化で同年代の魔術師なんか山向こうのヤンキー気味な兄ちゃんしか居なかったけど、ここでならもしかして良い出会いもあっちゃったりしたりなんかして……。


 しかし、受付にいたのは上振れても10代前半にしか見えないツインテールの女の子だった。

「いらっしゃいませ、お兄様。日本魔法少女協同組合東京支部へようこそ」

「ん!?」

魔法少女?

「え、あ、はは……すみません。俺、フロアを間違えたかも……」

「いいや、間違えていないよ蝸牛宗則くん」

奥からポニーテールの女の子が出てきた。こちらも大分幼い。

ツインテールの娘はピンクの髪色でポニテの娘は青い。服装もなんだかゴスロリ……とは違うが装飾過多気味だ。

「え、いや、すみません。俺……協会に行かなきゃ……」

「今は地区調整でこのエリアは協会の管轄外になっている。故に我々が若人を受け入れているのだ。君の名刺は古い物だが実に正しい」

「いや、でも、俺は魔法少女に興味とか無いんで……」

 どちらかといえばスタイルの良いお姉さんの方が……いやいや、違う、話がそれる。

「そうか、それは残念だ。しかし機能は引き継いでいるからね。師弟登録や必要なことがあればいつでも来なさい。歓迎しよう」

ポニテの女の子はやけに貫禄がある。

「あ、あざます……」

師匠……、魔術は父さんに習ってきたけど確か師匠の斡旋も頼めると聞いた。お姉さんの師匠もいるのだろうか。

「あ、あの。師匠の紹介とかもお願いできるんですか?」

「ん?うちだと私が二人、そこの京極くんが三人面倒を見ているよ」

「えっ、まだお若いのに??」

「ははは、私たちはそんなに若くはないよ」

ピンクのツインテの京極さんが入り口に掛かったボードを指し示す。


日本魔法少女協同組合は全て成人男性で構成されたクリーンで健全な治安維持組織です。


「へぇ……ん?」

成人男性

「私は貴澄健太郎きすみけんたろう53歳。こちらは京極崇きょうごくたかしくん35歳。魔法少女をしている」



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