大輔の葬式②

 桑原くわばら拓斗たくとは千穂、菜緒、龍司と同じS中学校の同級生だ。

 千穂は龍司を見つめ、


「あんたが連絡したんじゃないの?」


「俺? 俺はあいつの連絡先、知らないって……」


「そうなの……?」


 千穂は驚いて、菜緒に顔を向けた。


「菜緒、拓斗に連絡した?」


 菜緒は首を横に振った。


「もしかして……。今日のお葬式のこと、誰も拓斗に知らせてない……?」


 喪服を着た三人がそれぞれの顔を見合わせる。


「そう、みたいだな……」


 龍司が頭を掻きながらつぶやいた。


「ま、仕方ないんじゃね? 今さらどうにもできないし……。あ、ほら、時間。そろそろ中に入らないと」


 千穂と菜緒は気まずそうに目配せしたあと、龍司に続いて葬儀場の中へと入って行った。



 ――誰も拓斗に連絡しなかったなんて…。



 そういえば中学の時も同じようなことがあった。


 あれは修学旅行のとき。お土産を買うために別行動をとったときだった。千穂たちはあらかじめ集合時間と場所を決めてから別行動をとったつもりが、拓斗に伝わっておらず、時間になっても彼は集合場所にやって来なかったのだ。そのせいで千穂たちは全体の集合時間にも遅れ、引率の先生たちにこっぴどく叱られた。

 


 ――よりによって、大輔の葬式に……。



 千穂は肩を落としたが、龍司の言う通り、今さらどうにもならない。拓斗が現在どこで何をしているのか、千穂自身も知らないのだ。

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