大輔の葬式②
千穂は龍司を見つめ、
「あんたが連絡したんじゃないの?」
「俺? 俺はあいつの連絡先、知らないって……」
「そうなの……?」
千穂は驚いて、菜緒に顔を向けた。
「菜緒、拓斗に連絡した?」
菜緒は首を横に振った。
「もしかして……。今日のお葬式のこと、誰も拓斗に知らせてない……?」
喪服を着た三人がそれぞれの顔を見合わせる。
「そう、みたいだな……」
龍司が頭を掻きながらつぶやいた。
「ま、仕方ないんじゃね? 今さらどうにもできないし……。あ、ほら、時間。そろそろ中に入らないと」
千穂と菜緒は気まずそうに目配せしたあと、龍司に続いて葬儀場の中へと入って行った。
――誰も拓斗に連絡しなかったなんて…。
そういえば中学の時も同じようなことがあった。
あれは修学旅行のとき。お土産を買うために別行動をとったときだった。千穂たちはあらかじめ集合時間と場所を決めてから別行動をとったつもりが、拓斗に伝わっておらず、時間になっても彼は集合場所にやって来なかったのだ。そのせいで千穂たちは全体の集合時間にも遅れ、引率の先生たちにこっぴどく叱られた。
――よりによって、大輔の葬式に……。
千穂は肩を落としたが、龍司の言う通り、今さらどうにもならない。拓斗が現在どこで何をしているのか、千穂自身も知らないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます