第2話 推し活②

 シャーベットの握手会会場から俺が次に向かったのは二人目の推し、真澄麗奈ちゃんの所属している地下アイドルグループ・スノーウィが出演するライブ会場。

 

 思ったよりも人が多いな。いや、人が多いというか会場が狭いから密度が高いだけか。

 今日は別に握手会というわけではないので純粋に彼女の姿を見に来た感じだ。一週間ほど前に握手会はあったし今度行われるのは一か月後くらいだろうな。


 まあそれでいいのさ。推しと毎週のように対面してたらそれはもう推しじゃなくて友人みたいになってしまう。このくらいの距離感が心地よいのだ。


 ライブが始まった。うん、今日も麗奈ちゃんは可愛い。あれで人気ランキング最下位なんだろ?あれだけの容姿をしててなぜ最下位なのか。ファンは彼女らに一体何を求めているんだ。

 勝負の世界だから仕方ないところもあるとは思うけどね。


 そもそも俺が麗奈ちゃんを推し始めた理由は容姿が好みだったからだ。とはいっても入りが容姿だっただけでどんどん他の魅力にも取りつかれていった。人間容姿だけで判断してたら長続きしねぇよな。

 多分これは推し活だけじゃなくて恋愛にも当てはまるんじゃないか?恋したことねぇからわかんないけど。


 麗奈ちゃんは黒髪ロングの清純派アイドル。性格も見た目と同様にすごく清楚な性格をしてて人の闇に触れたことがなさそうなくらい心が澄んでいると思う。本当、将来変な人に騙されないか心配だ。


 で、スタイルの話をなると足が長くてすらっとしている印象。お胸は特別大きくもなく小さくもない。が、それが魅力的。

 これからもずっと推していきたいくらい大好きだ。





 しばらくしてライブが終わるとぞろぞろと人が帰っていった。踊り終わったスノーウィのみんなはステージ上でお互いに励ましあっている。 

 今回も素晴らしいライブだった。今まで何度も何度も足を運んでいるが飽きることを知らない。


 俺も帰るとしよう。


 せっかくここまで来たのでラーメン屋によることにした。この地域ではまぁまぁ人気のラーメン屋で今も店の中は混んでいた。

 俺は二席ほど空いていたカウンター席に案内されて腰を下ろす。


 注文をしてしばらくすると隣に帽子を深々とかぶった女性が座ってきた。マスクをしていて顔があまり見えないが美人そうな雰囲気だ。

 髪も黒くて長い。まるで麗奈ちゃんみたいだ。


「すみません、明翔さんですよね?」


「え?」


 え、今誰か俺の名前を呼ばなかったか?俺ほとんど友人居ないしそんなことないと思うんだけど。

 しかも女子みたいな声だったような。女子ならなおさらありえないと思うんだけど。


 気のせいか。気にしないでおくとしよう。


「すみません、明翔さんですよね?」


 …やっぱり俺のことを呼んでいるよな?しかもやっぱり女性の声だ。加えて近い距離から聞こえたよな?近くに座っている女性って隣の人しかいないよな。


 今日本はなんでもセクハラになるような時代だ。それが隣に座っている女性をチラ見することだって例外じゃない…が、もし彼女が俺を呼んでいて無視しているのであればそれはそれで心苦しい。


 …ということで向いてみようと思う。なんとなく隣の女性も俺の方を向いている気がするし。


「やっぱり明翔さんじゃありませんか。なぜ無視するのかわからないのですが」


「れ、麗奈ちゃんっ?」

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