アイドル人気ランキング最下位厨、黙って応援し続けていたらいつの間にか修羅場になっていた件
ミナトノソラ
第1話 推し活①
人間誰にだって趣味というものは存在する。たまーに一部の学生がいかにもそれがかっこいいのかのように趣味ないんだよねぇ、という奴がいるがそいつは無視させていただく。
だってそういう奴は痛いじゃん。無視しておけばいいんだよそんな奴。俺には一生理解出来ない価値観だろうな。
まあ今はそんなことはどうでもよくてルリアちゃんって将棋が趣味なんだ。なんか意外だ。ルリアちゃんハーフだしもっと洋風な趣味だと思ってたな。
洋風な趣味ってなんだよって話だけど。
「兄さん?またそんなもの読んでるの?」
「そんなものってなんだよ。応援してるアイドルなんだぞ!」
「でもその人、シャーベットの中で一番人気ないんでしょ?」
「それだからいいんじゃないか。独占できるんだぞ」
「兄さんは束縛するタイプなんだね」
「ちゃうわ」
俺は決して恋人を束縛するような人間ではない。浮気するのであれば色々と容赦はしないだろうけど。
「そんなアイドルばっかり推してたら恋人出来ないよ?」
「余計なお世話すぎるて」
俺は一途が好きなのだ。だから推し活と恋愛は区別する。推しは推しとして全力て応援して、人生のパートナーはじっくりと精査して考える。
精査できるほどイケメンじゃないけどな。俺の好みな人に万が一好かれる奇跡を信じるだけ。
今日の予定は今から国民的アイドルのシャーベットの握手会があるのでまずはそこに向かう。
シャーベットの中で俺が推している人が成宮ルリアちゃん。ロシア人とのハーフで美しい白髪が特徴の女の子だ。
そして不可解ながら先ほど妹が言っていたようにルリアちゃんはシャーベット10人の中で圧倒的に人気が低い。
ファンがいないわけではない。だけど確か活動初期には俺しか応援していなかったはずだ。
俺のSNSアカウントでルリアちゃんのことを呟きだした頃くらいから少しずつではあるがファンを増やしている。
俺としてルリアちゃんの魅力が広まりだして嬉しいような悲しいような気持ちを覚えている感じ。
なんであんなに美しくて可愛らしいルリアちゃんに人気が出ないのか俺には理解できない。
顔は日本人の中でもトップレベルだと思うし、スタイルもいい。お胸もひかえめなのが推せる。
あれか?白髪というのは受け入れられないのか?それともちょっと不愛想なところが引っ掛かるのか?
それが魅力なんだけどな。
…でルリアちゃんの握手会に行った後は地下アイドルグループ、スノーウィのライブがあるのでそこに参戦する。
結成して一年くらい経つアイドルグループでそろそろメジャーデビューするのではないかと噂になっている。
女子六人で構成されており、みんながみんな個性的で可愛らしい性格をしている。俺の推しは真澄麗奈ちゃんだ。黒髪ロングの清純派アイドルでクールな性格だ。
一週間くらい前にあったファン人気投票で五位に二票差で負けてしまった少し不運なところもある女の子。
そもそもファンの母数が少ないため仕方ないとも思うが、もしメジャーデビューを果たせばあっという間に人気はうなぎのぼりするだろう。
「じゃあ俺握手会行ってくるから留守番よろしくー。」
やっぱ並んでるな~。
主に人気ランキングトップ5の列には数えられないほどの人が並んでいる。最後尾の人どれくらい待つことになるんだろう。
俺は推しと会話できるならいくらでも待つことが可能だが、中にはこういうのが嫌いで列を乱そうとする輩がいるんだよな。ファンやめればいいのに。
で、目当てのルリアちゃんの列に並んでみると担当の人に待ち時間は五分だと言われた。
そりゃそうだよな。前に二人しかいねぇもん。おかしいだろこの差。
なんか前の二人もスマホしか見てないし興味ないんじゃないのか?適当なファンならルリアちゃんを傷つけるだけだからやめてほしいんだけど。
五分経って俺の番がやってきた。ルリアちゃんの握手会に来るのはこれで10回目になる。一度も休んだことがないから皆勤賞だ。
三回目くらいからルリアちゃんは俺を認知してくれるようになった。
「こんにちは成宮さん」
ルリアちゃんは俺の顔を見た瞬間パァっと顔が明るく…なった気がした。俺が来たからじゃない。多分俺が最後の人だからであろう。自惚れるな。
「こんにちは
といいながら彼女は俺の手を握る。か、可愛い。可愛すぎる。好きになっちゃう!
「もちろん。成宮さんに会えるんだから当たり前ですよ」
「もう、明翔さんったら。それと私のことはルリアって呼んでくださいって言ってるじゃないですか」
「いや、そんな。成宮さんを名前で呼ぶなんて恐れ多いですよ」
心の中で呼ばせていただいてるのでね。それで満足してるんだよ。
「もちろん私だってあんまり下の名前では呼ばれたくないですよ?でも明翔さんなら別です。どちらかというと読んでほしいんですよ!明翔さんは特別ですから」
「ははっ。ありがとうございます」
彼女にはバレないように振舞っているが、内心は興奮しまくっている。だって推しから特別なんて言われるんだぜ?
俺じゃなかったら勘違いするって。ガチ恋勢になっちゃうって。
それから制限時間内、なかなかに濃ゆい時間を過ごした。お互いの趣味であったり学校の話であったり様々だ。
「じゃあまた来ますね成宮さん。楽しかったです」
「そんな、最後なんですからもう少し時間をっ」
「すみません、次の用事があるので」
「用事ってなんですか?もしかして女の子とか?」
「…違いますよ。本屋に行くだけです。推しは成宮さんだけです!」
「本当ですか?嬉しいですっ!」
アイドルというのは誰だって一番になりたいものだ。ここで彼女に今から他の子を応援しに行きます、というのは火に油を注ぐようなものだ。
嘘も方便ってやつだな。
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病みます。
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