第2話
私たちの学校の朝読書が始まるのは8時20分。15分から図書委員の呼びかけが始まるけど、まぁ20分までにはついていれば問題ないわけである。
私は計算通り17分に昇降口に到着し、18分に教室前の廊下に立っている。
そう、計算通りなのだ。
「……~ううっ。入れない!」
まさかここで立ち往生するとは思ってもみなかった。そんなこと想定外だ。
まだ教室の中からはざわざわと話し声がする。
もしこの中に入っちゃったらいろいろ言われるのかな。めっちゃ怖いよ!
そうやって教室の前をうろうろしていたそのとき。
ガラガラガラ……
教室のドアが誰かによって開けられた。
――もしかして、先生? 私がドアの前でうろちょろしてたから?
「先生、ごめんなさいっ!?」
「……茉莉。俺だ」
「……へ?」
顔を上げると、そこにはさっき見た顔――航の顔と、こっちの方を見て「してやったり」と笑う女子達の顔が合った。
うわぁぁっ!? これは仕組まれた悪戯ですね!?
前で読書をしている図書委員でさえもこちらの方をちらちらと見つめているのは気のせいだろうか。気のせいだと思いたい。
「日奈、もう朝読書始まるぞ。席に着け」
「あ、はいっ!」
先生の一声で、私はやっと自分の席にたどり着くことができたのであった。
◇◆◇
「ひなちゃん、ぎりぎりやったね~」
朝の会が終わった直後、前の席の親友――
何でも話すことのできる、数少ない存在だ。
「咲楽、私がひなまつり嫌いなこと知ってるでしょ……」
「それはそうやけど、ほんまに嫌いなんやな~って実感したわ」
そうやって私を擁護するように咲楽は話すけど、その瞳には雄弁と一つの問いが示されている。
「そんで? 大里くんとはどうするん?」
……やっぱりきたか。恋バナ好きの本性こわっ。
「どうするって……いや、何にもないから」
「そんなわけないやろ? うち、ひなちゃんのこと応援しとるんよ?」
応援してるって……まるで、私があいつのことが、好き、みたいじゃない。
だって、そんな……
「あらあら、赤くなってしもて。かわええなぁ、恋する乙女っちゅうんは」
「~っ赤くなってなんてないもん! ほら咲楽、教室移動急がなきゃ!」
なおもにやにやと私のことを見つめてくる咲楽。
――もう。この気持ちは、「好き」とかじゃないのに……。
その後も咲楽から投げかけられる質問から逃げるように、私は一限目の教室に向かった。
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