第1話「食料生産工場」

1.オープニング


 2024年1月末日。

 かねてより企画していた『奈落王国』キャンペーンを始めることとなった。


GM:では奈落王国、第1話を始めます。よろしくお願いします。

ミリティアナ:よろしくお願いします。

エルヴィン:よろしくお願いします。

イーリス:おねがいします。


GM:まずはマスターシーンです。


 そもそもSW2.5はシーン制ではないため、場面を区切るこのような形式はルール的に規定されていない。

 もちろん場面ごとに区切るやり方は自然と行われることもあるだろうから、そう気にすることでもないだろうが。

 なおマスターシーンは、PCが誰も登場せずにNPCだけがやりとりをして、PLに情報を渡す目的や、後の伏線を張るためなどに使用される。


GM:奈落の魔域に囚われて早1ヶ月。なんとか国家としての体を為し、女王ヨルの治世下のもと、オルドレーネ王国の民はここを安住の地とすべく懸命に働いていた。

GM:早々に発足した特務部隊には現オルドレーネ王国きっての4人の優秀な人材を集め、周辺に現れる魔神との戦いに度々、彼らを招集して対応している。

GM:エルヴィン・フランツは特務部隊専任として騎士団から除籍され、実質的にリーダーの役割を果たすよう期待されている。本人かどうかの是非はともかく、元騎士としての腕前は確かであるための起用だ。

GM:ミリティアナは特務部隊の発足を聞き自ら志願したが若すぎた。兄ハムラからの推薦がなければ、特務部隊の一員にはなれなかっただろう。学業との兼任は多忙を極めるが、本人の士気は高いようだ。

GM:イーリス・アーレントは王国民ではないものの、戦時から難民時期まで献身的に王国を支えてきた腕利きの神官である。神殿から度々離れることになる特務部隊への招集には女王も迷ったが、必要な人材だと割り切って声をかけた。

GM:リズベットは元外務大臣の侍女であり、戦時から今も女王の侍女として働いている。しかしその魔導の技は侍女として扱うには少々、腕が良すぎた。特務部隊への参加を請われると、当人は一も二もなく参加を許諾する。

GM:現在の王国の懸念点は食料問題にある。ちなみに水不足は王国の西に大河が見つかっており、そこから引き込むことでなんとか解消していた。

GM:今も会議室にて王国の重鎮が集まり、食料問題について会議をしているところだ。

GM:会議の参加者は、女王ヨル、貴族議会議長ロックアラン、商人ギルドのカニーナ、近衛騎士ハムラ、ライフォス神殿長ブライシオ、冒険者ギルドのニネットである。


ヨル:「その後、食料問題について何か進展はありましたか?」

ロックアラン:「議会では農作物の値段高騰が問題であると突き上げを食らっているところです。なんとか早めに問題を解消して頂きたい」


カニーナ:「農作物の値段は国庫からの支援金を支出して頂くくらいしか案はありませんね」

ハムラ:「とはいえ国庫も無尽蔵ではない。先の見えない今、安易に国庫を開くなど……」


ヨル:「予算についてはゆとりを持って組んであります。まだこの王国が成り立ち1ヶ月。私は今も非常時であると認識していますから、支援金については検討します」

ブライシオ:「さすがヨル女王陛下。民草もその施策には喜ぶことになるでしょう」

ロックアラン:「しかし根本的な解決にはなっておらんぞ」


ニネット:「……実は盗賊ギルドから情報提供があった。南東に3日程度の場所に、魔動機文明時代の遺跡があったとのことだ」


ヨル:「遺跡、ですか?」


ニネット:「入り口には魔動機文明語で『食料生産工場』とあったそうだ」

カニーナ:「ちょっと、それを早く言いなさいよ!!」


ニネット:「セキュリティが生きているらしい。何より片道3日間の道中と遺跡の探索。危険極まりない。……女王陛下、特務部隊は動かせますか?」


ヨル:「そのような危険な任務に当たるための特務部隊です。彼らに任せるしかないでしょう。遺跡が望むようなものであった場合、問題解決の糸口を得られるのですから」


カニーナ:「しかし『食料生産工場』?そのままの意味だとしたら嬉しいけど、片道で3日は厳しい距離ね。商人の護送に騎士団は使えるの?」

ハムラ:「騎士団は王国防衛に手一杯です。残念ながら商人の護送に往復で6日も拘束されるのは……」

カニーナ:「あら、でも食料のためなら騎士団も動かざるを得ないでしょう?食べるものが無くなったら、それこそ王国の防衛に穴が空く」


ヨル:「そのくらいにして、カニーナ。騎士たちの多くは名誉ある戦死を遂げている。今の騎士団は見習いや引退した者たちを呼び戻してなんとか形となっているの」


ニネット:「冒険者も難易度の低い討伐から鍛え直しているところだ。遺跡が望むものだとしても、活用は厳しいかもしれん。しかし調査は早めにしておくべきだろう」


ヨル:「では特務部隊に依頼を出します。――リズベット、特務部隊の招集をよろしく」

リズベット:「承りました、女王陛下」


 他に誰もPCが登場していないにも関わらず、GMPCの特権でリズベットはしれっと登場していた。


GM:かくして特務部隊が招集されることとなった。


GM:というわけで、君たちのOPだ。

GM:君たちは特務部隊のために用意されている作戦指令室に集まっていた。

GM:ここにはヨル女王、騎士ハムラ、侍女アリーゼ、そして君たちの4人がいる。

GM:君たちはヨル女王から、現在の食料問題とそれを解決する可能性のある王国の南東に3日程度の距離にある遺跡について聞かされた。


ヨル:「では特務部隊に命じます。食糧生産工場を調査してきてください。準備ができ次第、出発を」


リズベット:「女王陛下の仰る通りに」

エルヴィン:「女王陛下の仰せのままに」エルヴィンとしては是非もなし

ミリティアナ:「頑張ってくるのです」

イーリス:「衣食住揃ってこそ、だな。尽力しよう」


ハムラ:「ミリティアナ……大きな怪我などせずに戻ってきてくれ」

ミリティアナ:「……兄さまは心配しすぎなのです。これ位なんてことないのです」


GM:表向きは推薦したことを黙っている兄。心境は複雑であろう。


エルヴィン:ハムラの言葉にはちょっと渋い顔をしよう。妹と同じくらいの少女か……実力は見せてもらったが。

エルヴィン:まあでもあのハムラが推薦するのだから……とはいえ子供を危険に晒すなど。

エルヴィン:うーん、複雑だ。

ミリティアナ:若いから、侮られないように気を張ってるかなぁ。兄の心配通り、ちょっと表情は硬い。

エルヴィン:実力は見せてもらったから、認めないわけにもいかない。


イーリス:27歳のイーリスが全体でも年配な程度に、全体の年齢低いのよな。

エルヴィン:多分、有能な大人はほとんど死んじゃったからね。

エルヴィン:ハムラみたいな一握りの有能な若者が率いているんでしょう。

ミリティアナ:良い年の人たちは、殿しんがりやっただろうしねぇ


アリーゼ:「兄上。ご武運をお祈りしています」

エルヴィン:「あ、ああ。心配しないで待っていてくれ」


GM:アリーゼの猜疑心は隠せない。エルヴィンはどこか隔意を感じることだろう。


エルヴィン:「では、行ってまいります」アリーゼとの距離感なー、こっちもどう反応したらいいか難しいのでこれ以上は触れない


ヨル:「ではよろしく頼みましたよ」準備することはないね? 保存食も持たせたし。


エルヴィン:ないない、大丈夫。

リズベット:「はい」ぺこり

ミリティアナ:大丈夫ー。

イーリス:大丈夫なはずだ。あ、毎日【クリーン・クロース】してるでいいでしょうか? アーデニ司祭として、白衣は常に清潔にしておきたい。


 “糸織神”アーデニとは、その名の通り布などを司る神である。衣服など以外にも特に包帯や止血帯など医療関連に使われる清潔な布を司ることから、医療従事者に信徒が多い。詳しくは『MA』51頁にて。


GM:なるほどいいでしょう>クリーンクロース


エルヴィン:伝説級の民間魔法だ(違

イーリス:この魔法、ほつれとかも直すんでヤバいんですよね。

イーリス:神殿のことはブライシオに任せつつ、病院は……看護師くらいはいるのだろうか。


GM:見習い神官たちがアーデニ神殿で頑張っていることでしょう。

エルヴィン:多分クリストフはそういう職種の育成に出資していました。


イーリス:見習いたちにがんばってもらおう。


 オープニングとしては以上となる。

 さていよいよPCたちの冒険が始まる……!!

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