再会……そして
改めて部屋の中を調べる。殺風景な金属の箱の中に居るような感じ。
天井に大きいマナ灯がともっていて、もの悲しく明かりを放っている。
なんとなく、アタシのお気に入りの、あの大空洞のような雰囲気を感じる。
敵がいないか探知しても、周囲に脅威はない。
そりゃそうよね――だって、極太レーザーの相手が消し飛んだ感触、ちゃんと感じたもん。
とりあえず、この階層の敵は片付いたってことでいいのかな?
ラーヴィは以前来た時にマッピングしていたのだろう。
マナストレージから資料を取り出して部屋の様子と資料を交互に見比べる。
「……一致した。ここは以前通過したことがある」
「お♪ ホント? それなら、ここから葵とミントの場所もイケる?」
アタシの質問に、彼は真っすぐ首を縦に振る。よし!
「それなら早く、葵たちと合流しなきゃ♪ 発信機もあるし、もう少しっしょ?」
四人で頷き合って、アタシたちはラーヴィの案内に従って、移動を再開した。
* * * *
発信機を確認すると、もう間もなく、二人と合流できる距離に近づいていることが分かる。
「……二人とも無事だとは言ってたから、なにか動けない理由で、待機してるのかしら?」
再び発信機に目を落とす、相変わらず、葵とミントが動いた痕跡はない。
アタシがつぶやいた言葉に、ラーヴィが答える。
「こういう入り組んだダンジョンでは、それが正解だろう。下手に動けば、迷ったり、トラップに引っかかる危険もある」
……確かに。こっちは人数もいるし、状況によっては無理に動かない方がいいって、サバイバル訓練でも習ったわね。
一つ気になることがあったので、アタシは彼に尋ねてみた。
「アンタが言ってたこの二十五層って、地上から数えて二十五層目って意味だよね? じゃあ、敵の本拠地と、今のアタシたちの位置って、どれくらい距離あるの?」
二十五層も下ってるとなれば、地上から考えれば、相当な深さのはず。
それってつまり――もうかなり近いんじゃないの?
ラーヴィは歩みを止めず、少しだけ思案する素振りを見せてから、答えてくれた。
「僕の記憶が確かなら……あと五層、下に降りれば到達できる。転移の逆利用が、かなり成功したな」
「……それ、けっこう近づいてるってことじゃない!?」
思わず、大きな声が出た。なんてこと?
相手は異界化による転送を利用し、アタシ達の到達を妨げようとしたハズでしょ?
なのに逆にアタシたちを近づけてない? やってる事あべこべに出来てる!
……ある時を境に、邪神側がこうもミスすることが多いような?
……うーん、ややこしいことは、今は考えんとこ。
それより、もうすぐ!
この角を曲がれば、ルミィアを除く全員が揃う――
* * * *
角を曲がった先には……葵と、ミントの姿が!
「葵! ミント! よかった! 無事で!」
「お姉ちゃん!
「皆無事で、よかったわ♪ ありがとう、来てくれて」
二人はこちらに寄ってきて、皆で抱きしめ合いながらアタシ達は再会を喜んだ。
嗚呼……無事だった! 二人とも! よかったぁ……! 本当によかった……
あの通信があってから、ずっと心配してたんだから、アタシ。
ラーヴィは周囲を探知し、敵意も罠も存在しないことを確認してくれる。
この場所は安全――ひとまず安心して、一息つけそうだ。
けれど、その時だった。ラーヴィがある場所を、驚きの表情で見つめていた。
……彼がこんなに驚くなんて? 一体なにが?
「どした? ラーヴィ?」
首をかしげながら、アタシは彼の横をすり抜けて前へ出て、彼の視線の先を確認する。
すると、ミントが暗い表情でここから動けなかったことを話そうとしていた。
「……そう、私達がここから動けない理由は……」
その後も、理由を発していたのだろうけど……
内容が、アタシの頭には入ってこなかった……
だって、そこに! 信じがたい光景が広がっていた……
「……ウソ。う、うそでしょ……?」
そこには、嗚呼……何てこと! 何てことなの!
生気のない赤い瞳。淡く光る輪郭。そこに立っていたのは――
そう、紛れもなく、
「つ……つ、椿咲ぁぁっ!? ど、どうして……あなたが、ここに!?」
――なぜここに? これはいったい?
実体を持たないって、何を意味しているの?
……でも、先に浮かぶ感情が、事実より優先した。
ずっと! ずっと!!
ずっと会いたかった! 椿咲! 椿咲ぁぁ!
気づけば涙がぼろぼろと足元に落ちていく。それを見て椿咲は微笑みながら、
『お姉様、お久しぶりですわ♪ お元気そうで、うれしいです』
直接脳に、椿咲の声が響き渡る……つばさぁ……嗚呼
「椿咲ぁぁ! あいだがったわよ!? うぅぇぇぇ……」
アタシの傍に、葵が駆け付けて、崩れ落ちそうなアタシを支えてくれた。
ミントと風華、凛華も傍に来てくれた。
風華と凛華も泣きながら……椿咲を見つめる。嗚咽で言葉が出ないようだ。
ミントは、そんなアタシたちにもらい泣きなのか、一緒に涙を流してくれた。
『わたくしもですわよ? お姉様……ずっと……素直なわたくしとして、ちゃんとお会いしたかったです……』
無念さを感じる……そうよ、だってこの子は十五年間!
幼いころから、華のティーンエージ突入後も、邪神に苛まれていた!
無念よね……アストラル体ということは……
葵のご両親のように!
とうとう助けられなかったってことなの!?
会いたかったけど、こんな再会だなんて!
嫌だ!
嘘だと言ってよ!!
こんな、こんな姿に……なってしまって!!
ああああああああああ!?
絶対許さん! リリス! 必ず殺してやる!
どんなことがあったとしても、貴様の存在を!
徹底して殺し尽くしてくれる!
アタシの殺意と怒気を感じ取ったのか、椿咲はあわてて、アタシに声を掛けてくれた。
『あ、あのぉ~? えっと、ラーヴィ様と葵とミントは、既に存じていると思いますけれど、あの……』
?
なしバツが悪そうな表情なん? だって、今の姿で現れたってことは……そういう事でしょ?
すると、目を閉じて、コホン! と咳を切る仕草をして……
ちょ、そのしぐさ可愛いから……こんなシリアスな場面で……
そう思っていると、椿咲は驚きの事実を言ってくれた。
『今のわたくしは、生霊です。まだ死んでませんのよ? お姉様、風華、凛華? 望んではいますけれど、勝手に殺さないでくださいませ?』
…………へ?
それを聞いたアタシと風華たちは、思いっきり目が点になった。
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