2-4

ボーっとしていたアタシは虎ちゃんの二度目の呼びかけにさえ気が付かず、ブレザーの裾をちょんちょんと引っ張られたことでようやく気が付いた。


「わ、悪い!何の話だっけ?」

「んだよ歩ー。俺のデンジャラス実話を聞いてなかったのかよー」

「ご…ごめん……」


なんとなく変な空気を作ってしまったので何とか笑顔を取り繕う。

視線を感じて夕微の方を見てみると……今にもげんこつを振り落としたいような形相でこっちを見ていた。

ひっ……!!


「わり…ちょっとトイレ……」

「歩、大丈夫か?」

「うん。お腹痛いだけだから」


そう言ってわざとお腹あたりを押さえて前屈みになると、そのまま夕微やみんなから逃げるようにその場を離れた。


「……はぁ……」


トイレに行くことはなく、やって来ていたのは屋上。

龍がしょっちゅう寝てるからか鍵は開けっ放しだった。


「どうしよう……」


入口のすぐ横の壁に背中をつけて座り込み、髪をくしゃっと掴む。


…みんなと話すことが出来ない。

それどころか、ちゃんと顔すら見れない。

アタシさえ普通にすれば何も変わることなんてないのに――…。


『犯人は……青学の人間』


『俺らに、身近なヤツ』


……夕微と龍はどうして平気な顔でいられるの?

あんな話しされて、アタシには無理だよ……っ。

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