第69話 諸国遍歴編~サウスポルトニアに今起こっている危機
蟻の魔物の暴走から逃げて来た逃走者達のリーダーゴンザレスは冒険者ギルドの受付カウンターの内側に身を乗り出し大声を張り上げた。
「おーい、誰かいないか~?いたら出て来てくれ~。依頼についての報告があるんだ!おーい誰か~?」
「は~い、今行きま~す!」
カウンターの奥から呼びかけに答える声が聞こえてくる。そうしてカツカツ足音を鳴らしながら黒髪に肩までのボブ、前髪を眉毛くらいまで流した女性が現れた。身長は160cm前後、愛想の良い美人さんだ。
「ゴンザレスさんお待たせいたしました。ご報告という事ですね」
「お~ハンナちゃんか、今夜も夜通し勤務かい?」
「そうなんですよ。ここ最近アンデット達の動きが活発化していて、夜間はもちろんですが、夕方や天気の悪い日だと日中でも動き回ってますからね。私達職員も昼夜問わず対応できるよう、交代で夜勤を務めてます。そろそろ解決してくれないと身が持ちませんよ・・・」
「そりゃお気の毒だな。ぶっ倒れないよう、無理はしないようにな。ところで、ギルド長はいるかい?」
「そろそろ戻って来る頃かと・・・。あっ、噂をすれば何とやら、ギルド長が戻られたみたいです!」
この後俺達は戻ったばかりのギルド長と一緒に会議室みたいな部屋で話をする事となった。少し不機嫌みたいだが、別に俺達のせいじゃないよね?強面にスキンヘッドという風貌に少しビビり気味の俺なのであった。
「そうかそりゃ災難だったな。この馬鹿どもが迷惑かけちまったようで済まなかった。ったく次から次へと問題ばかり持ち上がる。補償の代わりと言っちゃなんだが持ち込んだ素材の買取価格に色を付けさせもらうって事でなんとか勘弁してもらえねぇか。」
「私はそれでかまわないのだが、実質的にはほぼラング殿達の手柄だ。そういう訳で彼らの決定に私達は従う事としよう。これについては我らの依頼主も同意見だ」
「俺達も問題ありません。仲間達も昆虫系の素材には興味ないみたいなので、高く買い取ってくれるなら逆に有難いくらいです」
「スタンピードについてはこれでいいな。ではその蟻達の対応について話したい。実を言うと今冒険者ギルドは他の事に手を取られていてだな、蟻にまで手が回らんのだ。今聞いた話だとお前さん方はかなりの手練れのようだ。どうだろう、協力をお願いできないか?」
「つまり蟻の討伐を私達暁に眠るダイヤとラング殿、そしてゴンザレス殿達に依頼したいという事だろうか?」
「そう言う事だ。俺もクソババァと一緒に同行するから戦力的にはなんとかなるだろう。ゴンザレス達の汚名返上に協力してやってくれねぇか?ぶっちゃけた話、今すぐ動ける人数は他に全くいねぇんだ。恐らく蟻達は既に巣に戻っているだろうから、手っ取り早いのは巣ごと丸焼きにする事だな」
「おっ!おっさん達が来てくれるなら100人力だ。それならこの少人数でもなんとかなるな」
ゴンザレスさんによればギルド長は元Sランクの冒険者で、腕前は相当なようだ。クソババァと言うのは獄炎の魔女と恐れられる彼の元パーティーメンバーなんだそうで、たった二人でも戦力の上積みはかなりのものと考えていいようだ。
「フム、我らは護衛としての任務が優先となるが、蟻達が街道にまで姿を現しているとなれば話は別だ。無理に先に進んで万一大群にでも襲われたら今度こそどうなるか分かったものではないからな。ならば速やかに蟻退治をした方が結果的には時間の短縮に繋がるだろう。だが、依頼主の承諾は不可欠となるため、一旦保留させてもらおう」
アイファさん達はタナスさんに相談の上結論を出すことになった。
俺達は別に急ぎの旅をしてるわけではないので、協力する方向でいいだろう。
仲間達も異存は無い様だ。
こうしてアイファさんは一旦席を離れ、その間ラング達一行はこの町に起きている別の案件とやらの話を聞く事になった。
☆ ☆ ☆
かつてこの一帯を治める一族があった。アインラッド王国が統一を果たすまでの群雄割拠の時代、この地に根を張り居城を構えた。
その者は名君と謳われた先代王に見出され、
領民から絶大な信頼を集め、いつまでもこの地を守ってくれると誰もが信じたその将軍こそ武神オウウン。
街に今も残る彼の彫像はそれだけこの地で尊敬を集めてきた証だ。だが、非業の死を遂げた彼が今この時代にアンデットとして猛威を振るっているのだという。
一族が滅亡する事となった戦いで共に散った部下達の亡骸を蘇らせたのは何故か?どうして100年以上も経った今突如として暴れ始めたのか。
理由は定かではないそうだが、ある組織が絡んでいるのではないのかというのがギルド長の推測だ。それと示す証拠も少しずつ集まっているらしい。
邪神を信奉する者達の集団「
狩り出された人達は廃城跡を抜け出し周囲を徘徊するアンデットの討伐にあてられている。アンデットの数が膨大なため対処に苦慮しているのだ。
1万にも及ぶアンデットを討伐するにしてもそれなりの戦力が求められる。
各方面に援軍を要請するもなかなか応じてもらえず、ここにきてやっと港町ポルテアで討伐隊が編成される運びとなったのだ。
その援軍が到着するまでの間はどうにか今いる人数で対応しなければならないというかなり切羽詰まった状況のようだった。
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