第12話 運のバランスが崩れるとき

 —— 誰かの運が増えれば、誰かの運が減る。

 —— 私たちの恋が、世界の運命を狂わせ始める。




 「最近、変じゃない?」


 朝のニュースを見ながら、私は違和感を覚えた。


 —— 「史上最高の宝くじ当選者が誕生!」

 —— 「未曾有の好景気、街は奇跡の連続!」

 —— 「しかしその裏で、不可解な ‘不運’ も急増……」


 「まるで ‘運’ のバランスが崩れてるみたい……」


 ふと、窓の外を見る。


 道端で転んだおじいさん、突然の停電、遅延続きの電車。

 その一方で、やたらと ‘幸運’ に恵まれている人もいる。


 —— まさか、これって……


 「……私の ‘運’ のせい?」


 昨日の ‘特別なデート’ 以降、私は驚くほど幸運だった。


 遅刻しそうな朝に、ちょうどバスが来た。

 仕事でミスをしたのに、偶然にもカバーされていた。

 道端で拾った宝くじが 高額当選 していた——。


 まるで、 ‘神様の力’ を分けてもらったみたいに。




 「それは ‘偶然’ じゃない」


 背後から聞こえたのは、懐かしい声。


 振り返ると、そこには ‘彼’ がいた。


 「……っ! 戻ってきたの!?」


 彼は静かに首を振る。


 「俺は ‘消えた’ わけじゃない。ただ——」


 彼の顔をよく見ると、明らかに ‘異変’ があった。


 —— あの金色の瞳が、以前よりも ‘薄れて’ いる。


「君と ‘恋’ をしたことで、俺の ‘運の力’ は減り続けている」


 「……え?」


 「その ‘しわ寄せ’ が、世界の運を狂わせているんだ」


 彼はそっと私の頬に触れる。


 「君に ‘運’ を分けたことで、俺の ‘神’ としての役割が崩れ始めている」


 「じゃあ……どうすれば?」


 彼は少し苦しそうに笑った。


 「…… ‘運’ は、誰かが増えれば、誰かが減るものだ」


 「それって…… ‘私が幸運になった分、誰かが不幸になる’ ってこと?」


 彼は何も言わず、ただ私を見つめる。




 それから数日後——。


 私は ‘運’ の歪みを、嫌でも実感することになる。


 「すみません、先月のボーナス、会社の業績悪化で ‘なし’ になりました」


 「えっ……」


 —— 会社が ‘突然の不景気’ に。


 「なんで!? ついこの間まで ‘史上最高の売上’ だったのに!?」


 「わからないんだ……何かが ‘急激に変わった’ としか……」


 同僚たちの困惑する顔を見て、私は思い出す。


 —— 誰かの ‘運’ が増えれば、誰かの ‘運’ が減る。


 つまり、私が ‘運をもらいすぎた’ せいで、周りの人たちに影響が出ている。


 「これって、私のせいなの……?」


 それとも——彼が ‘人間を愛したせい’ なの?




 「このままだと、世界の ‘運のバランス’ は完全に崩れる」


 夜、再び現れた彼は、静かに告げた。


 「……俺は ‘運の神’ であり続けることができないかもしれない」


 「どういうこと?」


 「俺の ‘役割’ は、運を管理すること。

でも ‘人間としての感情’ を持った時点で、その役割は揺らいでしまった」


 彼の手が震えている。


 「このまま ‘恋’ を続ければ、俺は ‘神’ ではなくなり……世界の運命が壊れる」


 「じゃあ、どうすれば……?」


 彼は、深く息を吐いた。


 「君が ‘俺との恋を諦める’ か——

それとも ‘世界の運命’ を壊すか」


 —— そんなの、どっちも選べない。


 私の ‘幸せ’ と、みんなの ‘運’——

 どちらかを ‘犠牲’ にしなければいけない未来。


 「……決めなければならない時が来た」


 彼の言葉が、夜の空気に消えていく。

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