第2話
昨日の夜、いつもの店でビールを飲んでいた。
マスターが丹念に磨き上げたグラスは良く冷えていて極上の泡を作り上げ、私の喉を潤す。
居心地のいい椅子。
いつもの様にマスターとたわいのない話をしていた。
昨日の夜はこの店にはめずらしくやけに騒がしかった。
「今日は賑やかね。」
「あぁ、あちらも常連さん。今日はいい事があったんだって。」
私が振り返るとその中の一人と目があった。
彼はまるで無くし物を見つけた時のような驚きと嬉しそうな表情をして見せた。
私に向かって何かを言っているようだが、周りの喧騒にかき消されて聞こえない。
私は無視してカウンターに向かい直すと二杯目のビールを頼んだ。
「ホント、この店にはめずらしく騒々しい。」
マスターがごめんねと笑う。
この気分屋のマスターが許しているのだから、お気に入りの常連さんなのだろうと、そんなマスターに肩をすくめてみせる。
「別に平気。」
「つれないね古本屋さんは。」
そう言って私の隣に腰掛ける男。
誰…。
さっきの男か…。
私は小さな古本屋でバイトをしていた。どうしてこの男がそれを知っているのだろう。
訝しげにマスターを見つめると、マスターは首を大きく横にふって、ついでに『嫌ね』と言いながら手を振って見せた。
私じゃないわよと言うように。
じゃぁ、誰が言ったのよ。
「覚えてないの?この間本を探してもらった…。」
その時になってよくよく顔を見た。
「あっ…。」
胸がちりちりと痛む。
ここで会うなんて…。
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