第27話 ちょっとした決意
「…で、出会っちゃったのね…」
溜息混じりの美耶。
深谷町の美耶の自宅。
艶やかな雰囲気など、微塵も無い。
夏海を駅で見送った後、ラインで美耶に報告したら、すぐさま電話がかかってきて、今現在。
閉店作業を全て神山さんに託して、美耶は慌てて俺と合流した。
「はぁ…一緒に居た男はどんな人だった?」
「いや、部屋の中から声が聞こえただけで、姿は見てないから…」
「ヤンチャそうな、ガラの悪い感じ?」
「まぁ、そうだね。」
「またか…ダメね、あの娘も。」
どういうこと?
知り合いかなんかだろうか?
「多分、元カレ、よ。多分ね。」
ああ、以前聞いた、先輩がやっと別れられたっていう…別れたんじゃなかったのか?
「寂しくなりすぎて、また、つけ込まれたんじゃないかなぁ…」
独り言のように呟く美耶。
「どんな人と居るの?って、ちょっと前に聞いたら、言葉を濁してのは、そういうことだったか…」
やはり、ちゃんと連絡を取り合ってた美耶。
本当に面倒見が良い、素敵な姐さんだ。
「せめて、こっちに顔出してくれたら、説得の仕様があるんだけど…こればかりは…」
少し疲れたような、諦めた表情になる美耶。
「美耶…俺が出来ること、ある?」
「綾ちゃんを心配してくれるの?」
「そりゃそうさ。ロクでもない輩の傍に居たって、先輩は幸せになれる訳無いんだから。」
「でも、あなたには関係ないじゃない?綾羽が誰と居ようと。」
「そりゃそうだけど…」
「それに、他の男に散々弄ばれた娘を許せるの?何人もの男を咥え込んできた娘を抱ける?」
美耶が感情的になる。
今まで、何回も面倒を見てきた娘が、またも悪い方向に向かっていることが許せないのだろう。
「関係ないよ。先輩は先輩だし、強がっているけど、根は優しくて寂しがりやなだけだから。」
ふー、と溜息をつく美耶。
深呼吸して、俺の目をじっと見据えた。
「ホント、良い男ね、あなたって。…いいわ。来るかどうか分からないけど、綾ちゃんに強く言って呼び出してみる。修くん。あなたが綾ちゃんを説得しなさい。」
強い眼光で、俺の目を見据える。
「手段は問わないわ。あなたの候補にするも、あなたが飼うでも、今より数倍マシだから。もちろん、真っ当な男とくっつけるでも、何でも良いから、元カレの元に戻らないようにして欲しい。」
ずっと…美耶は俺の瞳を泣きそうな顔で見つめている。
藁にでも縋りたい、何としてでも先輩を助けたい、そんな思いが溢れている。
「分かった。」
俺は短く返事をした。
美耶のこの思いは、何があっても果たさないとダメだ。
絶対に何とかする。
そう心に誓った。
「綾ちゃんに連絡するから、ちょっとだけ待ってて。」
そう言って、寝室に入った美耶。
何分経っただろうか。
俺はダイニングテーブルの椅子に座って、グラスを見つめていた。
俺は…どうするのが正解なのか?
もし、先輩が拒絶したら?
いろいろな思いが、頭の中を交錯する。
突然、寝室の扉が開いた。
「明日、でも良いかな…?」
「うん。いつでも。」
「じゃ、昼の1時に駅前のスタバにしとくね。大丈夫?学校とか?」
「大丈夫。」
「分かった。…明日、綾ちゃんをお願いね…」
そう言った美耶の顔色はあまり良くない。
心労がたたっているのだろう。
俺は優しく美耶を抱き締めた。
「…夏海抱いて、今日は無理でしょう?」
「…せめて、美耶の傍に居たいんだけど…」
「ふふ。ごめんなさいね。かなり無茶言ってるのは分かってるの。負担かけて…本当にごめんなさい。」
「負担なんかじゃないよ。先輩のことが心配なのは俺も同じだし、何より、美耶の願いは叶えてあげたいと思っているから。」
「ふふ…ありがとう…ね、本当に傍に居ても良いの?夏海のこと、本当に好きなんでしょう?」
「うん。美耶には傍に居て欲しい。もちろん夏海のことは愛してるけど、大切なのは美耶も同じだから…」
美耶が優しく唇を奪って、俺の頭を撫でる。
本当に優しい女性だ。
美しくて、他人思いで、責任感のある…
美耶は本当に素晴らしい女性だと思う。
そんな素晴らしい女性が、1人の女として、俺のことを思ってくれている…
正直、つい最近までは、女性は利用するものだと思っていた。
自分の力を誇示するため。
自分の性欲を満たすため。
自分の子孫を残すため。
けれど、美優や美耶、夏海に教えられた気がする。
人間は1人で生きていけないからこそ、支えあって生きていかなければならない。
そこに献身があり、情欲があり、愛情があるのだということを。
もしかしたら…
五家の誓い、とはそういうことの延長にあるんじゃないのか…?
五人の女性を等しく従属させて、各々の家の跡取り候補を産ませる。
五家の長として、長く繁栄をもたらすために。
俺は…
自らの願望を叶えるために、五家の誓いを立てようとしていた。
大爺様…曽祖父に力を認めさせて、願望を叶えるために。
今の俺は…間違っているのだろうか?
その夜、俺は美耶を抱いた。
夏海だけじゃなく、等しく美耶を愛したい。
その一心だった。
行為中、なぜか美耶は微笑みながら泣いていて、ずっと傍にいるから…と傍に居させて、と何度も訴えていた。
俺は、何もかも諦めないために、五家の誓いを立てる決意をしたのだった。
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