13 アガペーⅡ




「だから、姉さんは間違えてないよ!さ、さっきの、だって、何か理由があるんでしょ?キ、キスは、初めてだったけど、姉さんだから……嫌じゃないんだよ?」




「う、うぅぁああ」



全てが許された気になった。

何も解決はしてないのっていうに、悠の言葉があたしを救った。


童心に戻ったように、悠の腕の中でしばらく泣き続けた。

今だけは、弟に甘えたかった。



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一通り泣きつかれて、腫らした目でもう一度悠と向き合った。


「悠、あたしはお前のことが好きだ」


「う、うん」


「姉弟だけど、そんなのは関係ない」


「ん?うん」


たぶん、あたしの好きは、悠が思ってる好きとは違うんだ。


「それに、お前に好きな奴がいたとしても」


悠は、あたしよりあたしのことを見ていてくれた。

あたしを信頼してくれていた。


そうだよな。小学生の恋愛なんざ所詮ままごとみたいなもんだよ。

悠にとってのファーストキスがあたしに余裕をつくったのかもしれない。

最低だが。


「関係ないよな」


悠は知らないだろうけど、こんなインモラルな恋もあるんだ。

略奪愛ってのもあるんだ。


「え!?それって、僕には無理ってこと?」


悠が目を丸くした。


「まーそういうこった」


「ひ、ひどいよ姉さん」


「ははははっ」




ごめんな、お前の姉は全然かっこよくなんてなくて、弱くて、気持ち悪いんだよ。

だけど、悠がそう思ってくれていたなら、そういうあたしがかっこいいって言うんなら。

あたしは自分を曲げないことにしたよ。



「そうだ!お前に買ってやったゲームあったろ?あれ、あたしの分も買ってきたんだよ」


「え、そうなの?」


「ああ、悠と久しぶりに遊びたかったんだよ」


「そっか」


悠は顔をほころばせる。

さっきまでは、隠しきれてなかった不安感が、なくなってしまった顔。

あたしは、もう大丈夫。

忘れていた、諦めていたものを取り戻した。



「じゃあ、今日は久しぶりに一緒に風呂入るぞ」


「えー」


「その前に夕飯だけどな、ははっ」



悠が生まれてから初めて、あたしは心から笑えた気がした。



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夜、22時くらい。

あたしの部屋のベッドで、悠と横に並んでゲームをしていた。

ふと、思ったことを悠に聞いた。


「ところでさ、悠が好きな奴ってどんな奴なんだ?」


少しは、ヒントになるかなと。


「え、えとー……」


ん?

悠はあたしには隠し事しないだろうなと、今日の一連の出来事でそう思っていた。

そんな悠の反応に、より興味が湧いた。


「なんだ?言いにくいのか?そんなやばい奴なのか?」


「いや、そうじゃなくって……」


なんか歯切れの悪さを感じた。


「実は……」


「ふ、、いるんだよね……」




こ、こいつ。

マジで諦めてたまるかと、そう思った。

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