コバルトブルーの手袋の行方

第2話

今日はクリスマスイブ。



特にやる事も約束も無くて、



オレはいつものように埠頭でアイツらと恒例の鍋を囲む予定だった。



足らなくなった酒をテルと一緒に買い出しに来て、



ついでとばかりにヤガミから追加の買い物の電話が引っ切り無しに掛かって来て、すでに両手は買い物袋でいっぱいだ。



うんざりしながらもきちんと電話に出てやってるオレは人が好いいんだろう。



テルはそれを見越してか、ケータイを埠頭に置いて来たというから確信犯だ。



この寒空に、1分だっていたくねぇオレは、視界の端に、白い影を見つけた。



数時間前、テルのバイクの後ろに乗って埠頭に向かう時も、あの影を見た。



誰も来そうに無い繁華街の前の大時計の前に立ちつくすアイツ。



曇り空の所為か、顔色が酷く悪く見えた。



待ち会わせだろうか…。



そんな事を考えながら、オレはテルが戻ってくるのを待っていた。



急にクラッカーを死ぬほど鳴らしたいと言って、さっきからクラッカーばかりを買占めに走ってる。



いい加減、飽きて来た。



寒くて、手足の感覚が鈍くなる。



テルから奪い取った帽子とマフラーを顔が半分以上隠れるまでグルグル巻きにして、



ハーフコートのポケットに手を入れた。



中には買い物の際に持たされた大量のカイロが入っている。



それをギュッと握った。



寒ぃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る