第16話

匂いか。



それなら、



「私、本当に皐月くんから離れる事が出来無いんだね」



ぽつりと零したその言葉。



皐月くんは眉を寄せて不快感を現にした。




「はぁ?


お前まだ俺から逃げようとかバカな事考えてた訳?


本当に懲りないね、こないだそれを試みて失敗したばっかだろ」



「……、」




「それとも何?


またああいう“お仕置き”がされたくて

わざと煽ってる?」




…!!




「な゙っ、そんな訳――」



ムッとして顔を上げた瞬間、私を見下ろしている皐月くんの顔がドアップで視界に飛び込んできて。



「っ!」



又しても言葉を失ってしまう。



「お前、本当に“この俺”は嫌いだね」



ふ、と小さく息を吐く皐月くんは諦めの表情をしていた。

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