寝たふりの代償

くすぐり小説 / くすくすくらぶ

寝たふりの代償

夕暮れ時、アパートのリビングは温かいオレンジ色の光に染まっていた。

咲希はソファに寝転がり、毛布を肩まで引き上げて目を閉じていた。疲れて眠っているように見えたが、実は恋人の優太が仕事から戻ってくるのを待って、完璧な寝たふりを決め込んでいた。優太が一体どんな反応をするか見たくて、心の中で「絶対バレないようにするぞ」と気合を入れていた。


「ただいま〜」

優太がドアを開けてリビングに入ると、ソファで静かに横たわる咲希を見て首をかしげた。

「さっきライン送ったのに…ねえ、寝てるの?」とつぶやきながら、忍び足でソファに近づく。

咲希は呼吸をゆっくり一定に保ち、顔の筋肉を緩めて微動だにしない。

優太はしばらく彼女の寝顔を観察した後、「ふーん?」と笑って、毛布をそっとめくった。


咲希は優太の思いがけない行動に驚きながら、なんとか寝たふりをキープする。

目を閉じたままの真っ暗な視界の中で、咲希の脇腹を優太の指先がなぞった。



「ねー、起きてよ」


軽く、くすぐるように指先でツンツンとつつかれる。咲希は心の中で「耐えろ、耐えろ」と自分を励まし、なんとか無反応を貫いた。


優太は「へえ、ほんとに寝てるっぽいな」と呟きながら、今度は両手で軽く脇腹をくすぐり始めた。

指がリズミカルに動き、くすぐったさが波のように襲ってくる。

咲希は唇を噛み、息を止めて必死に我慢する。体がピクッとしそうになるのを抑え込み、寝たふりを続ける。


「頑固だな…じゃあ本気出すか」と優太が笑い、次はお腹のあたりに手を移して軽くつついたり、素早く指を滑らせたりし始めた。

咲希の頭の中は「くすぐったい!でもまだいける!」とパニック状態だったが、なんとか表情を変えずに耐え抜く。

もうほとんどバレているのに、咲希の目的はどこまで耐えられるかにいつの間にか変わってしまっていた。


優太はさらにエスカレートし、足の裏に手を伸ばして軽くくすぐり始めた。

足裏は咲希の弱点だったけれど、彼女は膝を微かに曲げて我慢する。

「寝返りを打っただけ」と誤魔化す演技だ。


これには優太も一瞬「マジで寝てるのか…?いや怪しいな」と内心疑いながら、

今度は首筋に指を這わせてきた。首筋をくすぐられると、もう咲希の我慢は限界ギリギリだった。ついに小さく「んっ」と声が漏れてしまう。

それでも目を閉じたまま、体を少し動かして「寝言だった」とごまかそうとしてみる。

優太は「怪しい反応きた♪」と嬉しそうに笑って、両手で脇腹と首筋を同時にこちょこちょくすぐり始めた。


ここでついに咲希の防御が崩壊。

「ひゃっ!もうダメ!」と叫んで飛び起き、

笑いながら「やめてー!くすぐったいってば!」とクッションを投げつけた。

優太は「やっと起きた!寝たふり下手すぎだろ」と大笑い。

咲希は息を切らしながら「意地悪!でも…ちょっと楽しかったかも」と照れ笑い。二人はソファでじゃれ合いながら、夕暮れが夜に変わるのも忘れて笑い合ったのだった。



おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

寝たふりの代償 くすぐり小説 / くすくすくらぶ @guriko_99

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ