第6話 生徒会選挙
「遅刻してすみません。伏木真人です」
俺は、担任だというロボットと生徒たちを代わる代わる見ながら挨拶した。
「お前ら二人のことは、みんな知ってるぜ」
金髪が言うと、すぐさま黒髪も続いた。
「今朝の生徒会選挙で、名前と顔写真が大きくモニターに出ていたからね」
「うそっ。恥ずかしい。どの写真使われたんだろう?」
響が口を抑えてあたふたしている。
「立候補者2名を除く98名で投票を行った結果が、学園のホームページに出ている。生徒会長、伏木真人。信任97票、不信任1票。副会長、音成響。信任98票」
黒髪が、手元のノートパソコンを開きながら言った。
響は不信任ゼロか。ますます俺の不信任の1票が目立つじゃないか。なんだか腹が立ってきた。
「それにしてもこの生徒会選挙、怪しいな」
黒髪がパソコンを睨みながら、顎の下に手を当てる。
「な、なにがだよ」
さっそく怪しまれているじゃないか。こんなんでスパイ探しなんて、うまくいくのだろうか。
「書記も会計もいない。事前の選挙運動一切なし。二人とも、本当に立候補したのか?」
黒髪が、俺と響を一瞥する。
「そりゃ、まぁ……。ねぇ? 真人くん?」
響の声は明らかに動揺している。
ここは俺がなんとか切り抜けなければ。
「あ、あぁ。俺はこのレアリティ学園の生徒会長になるのが、小さいころからの夢で……」
「小さいころからの夢? 今年できたばかりの学園だぞ」
黒髪が俺の嘘を一刀両断する。
「そ、それは言葉のあやっていうやつで……」
その後の言葉が続かない。やばい、背中の冷や汗が止まらん。
「ふーん」
黒髪の声は、俺に対する不信感を含んでいる。
こんな簡単に嘘を見抜かれたのでは、俺が人間だということがバレるのも、時間の問題かもしれない。
「具体的にはなんの為の、生徒会なのかな?」
黒髪が、狙った獲物を仕留めるような目で俺を見る。
「そ、それは……」
スパイ探しのための生徒会だなんて、口が裂けても言えない。
「えっと、レアリティ学園をよりよくする為の生徒会だよね?」
響が適当なことを言って、俺に同意を求めてくる。黒髪は、そんな抽象的な答えを求めていないだろう。
「どうせこの学園の生徒会長と副会長なんて、単なるお飾りみたいなもんだろ」
黒髪が鼻で笑って、パソコンに視線を戻した。
「あは。まぁ、そんなとこ! だよね、真人くんっ!」
響は明るく笑いながら、俺の背中を叩いた。嫌味を言われても根っから気にしないのか、それともそれに気づかない天然キャラなのか。
「まぁ、そんなのどうでもいいじゃん!」
金髪の大きな声が、話を割って入ってきた。
その声に隠れるように黒髪がボソッと呟いた言葉を、俺は聞き逃さなかった。
「別に俺が生徒会長を務めてもよかったんだが」
もしかしてこいつか? こいつなのか?
「俺に不信任を入れたのって……」
俺が言いかけた言葉は、金髪のやたら大きな声にかき消される。
「俺、
金髪の男が響に向かって言う。あきらかに俺の方は見ていない。
「響ちゃん、よろしくー」
は? 俺にはなにもなしかよ。
「俺は
黒髪がパソコンに視線を落としたまま早口で言った。何やらすごい速さで、キーボードを叩いている。
「二人ガ来ル前ニ、他ノ生徒ノ自己紹介ハ終ワリマシタ。モウ授業ノ時間デス」
「あ、すみません」
響が謝る。
「響は、拓也の隣。真人は俺の隣の席」
司がパソコンをいじりながら、顔も上げずに言う。
「授業ヲハジメマス」
担任の声に促されて、俺は司の隣に座った。
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