因幡来未の備忘録
安どぉなつ。
第1話 十六夜と来未
「おい来未、急がねぇと遅刻するぞ」
「わかってるって!あぁもう、こういう時に限って靴紐が解ける!」
金髪紫目の青年が来未と呼ばれた青く長い髪をリボンでまとめ、白いワンピースを着た少女に声をかける。
「そう言う十六夜は支度終わったのかよ!」
「バカかお前。終わってるから迎えに来てるんだろ」
十六夜と呼ばれた金髪の青年は頭を搔く。
「ごめんねぇ十六夜君、いつもいつも待たせちゃって」
同じく青い髪をした女性が十六夜に声をかける。
「いつもの事だし気にしてねぇッスよ、おばさん。」
「来未も早く支度しなさい!十六夜君、来未をよろしく頼むわね。」
そう言うと女性は足早に去っていった。
どうやら彼女は来未の母親らしい。
来未の顔立ちは母親譲りの様だ。
「よし出来た!待たせたな、十六夜!」
「待ちくたびれてろくろ首になるところだったぜ」
ケラケラと笑う十六夜。
「じゃ、いってきまーす!」
「おばさん、行ってきます」
十六夜は軽く一礼すると来未と共に玄関を後にし、外に出る。
季節は夏。
暑い日が続く中、十六夜は毎日来未と登校を共にしていた。
傍から見れば美男美女カップルだが、お互いそれどころでは無さそうだ。
「やべぇ、遅刻する!来未、手出せ!」
「お、おうっ」
来未は手を十六夜に差し出す。
「行くぜ!!」
来未の手を掴むと十六夜は物凄いスピードで道を駆け抜ける。
数多の生徒を抜かし、遅刻ギリギリというより余裕で登校出来た。
「キャー!十六夜君〜!」
十六夜の顔の良さに惚れた女子達が黄色い声をあげる。
「相変わらずウゼェヤツらだな……」
「まぁそういうなよ。モテモテだな、十六夜君?」
今度は仕返しでもするかのようにケラケラと笑う来未。
「お前なぁ……」
その態度に呆れる十六夜なのであった。
授業が終わった後、2人は帰路についていた。
ちょっと田舎な道である。
そんな道を2人並んで歩いていると
「Guuu……」
紫のモヤのような物が目の前に現れた。
「なんだコイツ!」
「来未、逃げるぞ!」
来未の手をとり走り出す十六夜。
だが逃げきれず直ぐに追いつかれてしまう。
「Gaaaaaa!!」
モヤのような物が十六夜に爪を振り下ろ___
「そこの2人、右に避けて!」
「!」
十六夜はギリギリで避けると魔力の塊が飛んでいき、モヤに向かって一直線に進み、モヤを穿つ。
「Gaaa……」
モヤは霧に姿を変え消え去って行った。
「2人とも、怪我は無い?」
「は、はい」
「ねェけど、中々おチビだな、アンタ」
「おチビ言うな!私は天元 彩!祓い屋をしてるの!……そうだ、2人も祓い屋に……うちの組織、天元に来ない?」
「唐突だな。」
「アタシは構わないけど……母さんに一言言っておきたい」
「それは構わないよ!明日、この場所で落ち合おうね!」
彩と名乗った金髪赤目の少女はそう言うと足早に去って行った。
マントには「祓」と書かれていた。
身長は恐らく140センチ代だろう。
そんな小さな少女がモヤを一撃で穿ったのは十六夜の興味を引いたらしい。
「……来未、俺、あのおチビの言う組織気になるんだが」
「アタシも。」
「なら!」
そう言うと2人は歩き出す。
それぞれ親に報告するつもりだ。
「ただいまー」
家に帰ると来未は天元への勧誘を母へ話す。
「でも危険じゃない?来未、元々身体強くないし……」
「大丈夫だって!十六夜もいるし!」
「……まぁ、止めても無駄ね。行ってらっしゃい。」
笑顔で母は告げる。
「ありがとう、母さん!」
部屋に着くと、来未は荷物をまとめていた。
スーツケースにお気に入りのぬいぐるみも詰め、準備万端だ。
「って訳なんだが、親父、お袋、構わねぇか?」
十六夜は真剣にそう告げる。
「十六夜ならいつか独り立ちすると思っていたが……」
「こんなに早いとは思わなかったわ」
2人共快諾してくれた様だ。
「ありがとな、親父、お袋」
そう言うと十六夜は自室に戻り、ベッドに横になる。
「……荷物、まとめねーと」
十六夜はスーツケースに適当に荷物を詰める。
詰め終わるとベッドに横になり、寝に入った。
波乱の一日が終わりを告げるのであった。
因幡来未の備忘録 安どぉなつ。 @danjonlive
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