第2話 あなたはイケメン俳優のような遊び人

 実家の茨城から昼前に北区に帰宅。明日から社会に復帰したくないーと思いながら、私は乾燥機付き洗濯機のスイッチを押して、そっからずうっと眠りこけていた。夕方になってのっそり起き、洗濯ものを適当に畳んだ。


 夕飯どうしようかなー、ウーバーしちゃうかとスマホを手に取った。マッチングアプリのいいねが複数人からきていた。


 一人目、シンプルに顔がノー。二人目、自己紹介がSNSに呟けないほどやばいうえに顔がこの世のものとは思えない。三人目、げ、超デブじゃん。ってことは私より自堕落なんじゃないかな。四人目、若いのに髪がないからパス。五人目、わ、結構かっこいい~ってことはさ……遊び。六人目、お金持ちの……80歳……。


 なかなか結婚に結び付くお付き合いに恵まれず、30歳の時、大手の結婚相談所に入会した。「高い金」払ったのに、「大手」の結婚相談所では一切、収穫はなかった。大手なのに。大手なのに。大手なのに。大手なのに。何のための大手だよ。上場取り消せや。金返せよ。男性に求める条件厳しい? ふつーだってのおおおおおお!!


 やってない婚活はすべてやってやる。それで結婚できなきゃ独身決め込んでやんよ。


 めちゃくそに抵抗はあったけど、そんな気持ちでマッチングアプリを始めて半年。玉石混交も過ぎるカオスワールドに泣く。友達はどうやって彼氏と出会ったのか不思議すぎて頭痛い。自分から気になる人にいいねも押してくけどうまくいかないし、やっぱりこんなところにさ、結婚につながる良き出会いなんか――。


 ねえわ! と叫び出しそうになった時、七人目の男性が画面に映し出された。


 リュウさん。私より一つ年下の33歳。千葉在住、私と同郷、茨城出身。メガネをかけた佐藤健みたい……。ええ、うそ、超好みなんですけど? 


 自分で言うのもなんだがスタイルは悪くない。そのせいかにいいねをくれる輩の40パーは体目的のカラモク、カラオケのあれみたいだな。ヤリなんとかってのは使い古されたお下品言葉なので自粛ね。そういう人はプロフの写真がなかなか決まってる。本人の顔写真だろうという人もいれば、加工だろうなって人も。要は、そんなんしかいねの。


 で次の20パーは不細工。その次の20パーが自己紹介に「こんな女性はイヤだ」「こんな女性じゃないと僕とは結婚できない」「こんな女性になれ」その他びっくりするほどおかしなことって書いてある案件。残りの20パーは普通の人。普通の人はなぜかメッセージが盛り上がらなくて自然消滅……なもんで、何度スマホを霞ヶ浦に投げそうになったことか。スタイルだけ良いペロンとした無個性顔面にいいねを押す佐藤健なんて幻想。一般レベルでかっこいい男からいいね、イコール遊び。一般を越えるこの写真は幻想。何かの見間違い。こんなイケメンが私にいいねくれるってどんな世界線? 異世界転生した? こないだ見たアニメの影響カナ、ごしごし。


 ……いや、あれ、さとうたけるうう? 健君じゃないですかあ??


 いやいやいや、アプリにおいてのイケメンはクソメン。カラモク、もしくはロマンス詐欺が決定事項。 おい、桜川未来、それはダメな方だ。眼鏡をかけた佐藤健はクソメンか詐欺師。じゃなければAIだ! サクラだ! わ、健君、AIの役やるんだー?? 見るー!!


 じゃああああない!! あああああああ、だめ! いいね返しちゃだめなのよおおおおお!!!


 ああ、ぽち。


 うう、面食いつらい。


 カラモクだからメッセージ来るんだろうなぁ。

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