「魔法」、「段ボール」、そして「椅子取りゲーム」

 ある日、放課後の文芸部室にて。


「せんぱいっ! 今日の部活は魔法バトルです!!」


「帰っていい?」


「ダメです!」


 案の定、開幕から意味がわからない。

だが目の前にはすでに段ボールで作られた謎の道具が山積みにされている。


「……なんだこの、“深夜テンションの工作物”みたいな山は」


「これはですね、魔導具(まどうぐ)です!」


「段ボールで?」


「そうです! これは“杖っぽい棒”、これは“封印の箱”、これは“魔法の椅子”!」


「それ、普通の折りたたみ椅子だよな」


「言っちゃダメなやつです!」





「で、今日の企画はですね!」


「……うん」


「魔法椅子取りゲーム!!」


「いや何それ」


「普通の椅子取りゲームに、魔法カードと呪文の要素を加えた新感覚バトルです!」


「完全に深夜テンションの発想だろ」


「ちなみに魔法は使えます!」


「お前しか使えねぇだろ」





 謎の段ボール製“魔法道具”を配られ、無理やりゲームが始まる。

BGMは後輩の口ずさむ「パッパラ〜♪ パッパラ〜♪」という謎のテーマ曲。


「さあ、音楽が止まった!」


「魔法発動!『イス・フリーズ!』」


「いや意味がわからん! なにその呪文!」


「その間に私は椅子をゲットします!」


「ズルいだろ!!」


「文芸部は想像力が武器ですからっ!」


「じゃあ俺も発動!『段ボール・インビジブル!』」


「何それ強そう!!」


「俺は椅子と一体化した! 見えないぞ!!」


「現実はただの段ボールかぶった変な人ですよ!!」






 なんだかんだで盛り上がる椅子取り魔法バトル(?)。

最後の一脚を巡る一騎打ち。


「……先輩、ここが最終決戦です」


「……」


「最後の魔法カードを、使います」


「来いよ」


「“本当は好きって言いたいけど言えない呪文”発動!!」


「は?」


「せんぱいのとなりの席が、いちばん落ち着くんですよね。……なんちゃって」


「お前、それ……」


「……魔法ですから!」


「……そっか。じゃあ俺も」


「?」


「『本当はこっちも、ちょっとドキッとした呪文』……ってことで」


「うわあああ! それはずるいです! 椅子と一緒に心まで奪う気ですか!!」


「勝負に勝ったのはお前だよ」


「勝ってません!! 先輩のその反応で、こっちが負けた気がしてます!!」


 今日、文芸部室には、段ボールと笑い声と、ほんのちょっぴりのときめきが残った。





「せんぱい」


「なんだ」


「……また魔法、かけてもいいですか?」


「次はちゃんと効果説明しとけよ」


「じゃあ“好きって思わせる魔法”とかどうですか?」


「……いや、もうちょっと効いてるかもしれん」


「っ……それ反則です!!」

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