倫理構文
貴殿之セイジャ
Prologue 記録
重苦しい淀みが鼻を突いた。
封鎖された筒井重工の停止された換気システムはこの密閉空間に仄かなオイルと鉄錆の香りを無秩序に散乱させる。一切の整備士が消え去った中でひとりでに点灯する蛍光灯と鳴り響く重機械の駆動音が演出する光景はまるで晴れやかに広がる不気味の谷であった。右隣で
一つ扉を開ける。
また一つ扉を開ける。
そうすると長く続く廊下の端に何かが映り込んだのが見えた。我孫子とアイコンタクトを取ると、次にそれは物音となって耳奥に入り込み、共に宙を舞う粉塵が鼻腔を刺激した。映り込んだそれは廊下の壁を蹴り上げて僕らに狙いを定め、ギシギシという金切音を関節部から鳴かせながら一直線に僕の義足を吹きとばした。それと見つめ合う。そこには人工的に造られた黒ずみに塗れた瞳がただただ無機質に反響していた。
Chapter1へ続く......。
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