stage12 僕とお前は実は似てるのかもって言いたかった
「ご主人様」
「な、なんだ」
「照れなくてもいいにゃあ」
コウは、呼ばれ方が慣れないなあ、と一人ぶつぶつ言った。
「この方はご友人にするべきお方であるにゃあ」
「いや、友人だよ?!」
カイは笑い出した。しかし、その猫が続けた言葉に冷や汗をかいた。
「なぜならその方には・・・・・・」
「ちょっとストップ!」
カイは慌ててその猫が喋り始めるのを制止した。この猫、もしかして僕が今日話そうとした事を全てペラペラと喋ってしまうのかも知れなかったからだ。
コウはカイの慌て様に驚いて朗らかに笑い出した。
「何だよ、そんなにあたふたして」
「いや、そのお猫様がね」
「ちょっとお猫様とは聞き捨てならないにゃあ」
「はあ?」
「猫、でいいにゃあ」
「いやいや?」
友人の猫を(しかも意思疎通が図れるのに)呼び捨てにするかい、と突っ込んだカイであった。
コウが冷蔵庫からジンジャーエールを出してきた。
「お前こんなん飲むの」
「まあ、偶には。で、仕切り直そう」
「そうだな」
「だにゃあ」
お前のせいだよ、とコウはため息をついた。何となく乾杯をして、授業のことや部活のことを話した。そろそろあの事を話そうかなと思って、ふとカイがスマホを見ると、兄から着信が入っていた。
「ごめん、ちょっと兄さんから電話があったわ」
「掛け直す?」
「ううん」
「まあ、俺が部屋から出てよっか」
「なぜそうなる」
カイはコウに断って、部屋の扉の前で電話をさせてもらうことにした。
3回コール音がした後、兄が出た。大学生なのだから授業やら友達やらで忙しいはずなのに何なんだろうとぼんやり考えていると、兄は開口一番カイにこう言った。
「カイ。バラすのはやめなさい」
「は?」
そして通話は切れた。カイはスマホの通話終了画面をじっと見つめた。
言ってない。兄には一言も、今日コウに自分の目の謎の能力を話すなんて、何も言ってない。
だから兄は嫌いなのだった。意味の分からない能力の持ち主なのだった。カイなんてお呼びじゃないくらい訳の分からない強さを誇りつつ、一般人として暮らしていて、そして更に嫌なのがブラコンであるところだった。先回りしては先回りしては僕のやることなすこと先に決めていくのが、
「嫌なんだって・・・・・・」
コウが扉を開けて様子を確認してきた。電話が終わったと思ったのだろう。
「どうだった?」
「兄にすぐ家に帰れって言われた」
面倒すぎて全て兄のせいにすることにした。言う事を聞かないと嫌な感じがするし、今回は帰ろうと思った。ちょっと嘘をつくのだけが申し訳なかった。
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