stage11 あいつが楽しいならそれでいい

 カイはゲーセンの前で少しそわそわとしながら待っていた。登校する道すがら、コウに自身が隠していたことを話そうと思っていたのだった。それと同時に、昨日の男性についてもそれとなく聞くつもりではあった。

「よっ」

 考え込んでいるとコウが現れた。気づかなかった自分に呆れつつ、カイは返事を返した。

「おはよう」

「おはよ」

 並んで歩き出す。少しの沈黙の後、二人同時に言葉を発した。

「あのさ」

「昨日の事なんだけどさ」

 あ、ごめん、と言い合った後、カイは少し笑ってコウに言った。

「何だよ。お前から先に言えよ」

 コウは照れくさそうにしながら、話し始めた。

「昨日の男性は俺を探していたらしいんだけど」

「なんか言ってたね」

「ちょっと言いにくいんだけど、俺の仲間らしいんだ」

「仲間?」

「うーん・・・・・・」

 カイはコウが曖昧に言い淀んでいるのを見て提案した。

「コウ、何だか大事そうな話じゃん。その前に、僕から言わなくちゃならないことがあるんだけどさ、そっちが先でいい?」

「うん」

 自分の話を引っ込めて素直に頷くコウなのだった。

「本当は学校までの間に話そうかなとは考えてたんだけど、気が変わった。放課後どっかに二人で行かね?」

「分かった。なんか込み入った話だったら俺ん家来る?」

 それでいこ、と二人は頷きあった。


 放課後、コウとカイの二人は落ち合って帰り道を歩いていた。

「お前ん家行くの久々じゃん」

「大して広くもないし、楽しくないじゃんか」

「そういうもんかね?」

 コウは十畳ほどの手狭なワンルームのアパートに一人で住んでいた。駅前から徒歩十五分程で到着して、カイがコウに続いて上がり込んだ。

「お邪魔しまーす」

「はいはい」

 そして、そこには白猫が一匹座っていた。

「はいだにゃあ」

 猫が口を聞いたのを見て、コウは黙り込んだ。カイも黙り込んだ。何かのギャグかな、とカイはぼんやり考えた。

「猫飼ってたっけ」

「昨日もらってきたんだ」

「なるほどね」

 座り込んでいる猫を眺めながら、カイは鞄を壁際に置いた。コウはベッドに座りなよとカイに勧め、自身は勉強机の椅子に座った。

「この猫、話すの」

「ああ。可愛いだろ」

「うん。ちょっと落ち着かないんだけど」

「お前猫嫌いだっけ」

「違うけど・・・・・・普通に受け入れてるお前の度胸に改めて僕は感心したわ」

「お前もな」

「もな、にゃあ」

 一つ深呼吸してカイは答えた。

「割と呆然としてるよ」

 でもまあ、と彼は続けた。

「何だか仲良いんだな。良かったよ」

 カイの優しさにコウは感謝して照れくさそうに下を向いた。

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