学園のヒロインに負けた噛みつき犬のライバル女子は4年後、愛される
ryoumi
第1話いきなりデッドエンド 入って早々、キワモノ女上司を下す 最大の敵
1 いきなりデッドエンド
私は
「バカおっしゃいますな。この沢島小夜子が負けるわけがないでしょ。おーほっほ。あなたのようなちんちくりんのトーヘンボク。この大金持ち、センスと才能の塊、学園一の花、頭脳優秀でモテモテの沢島小夜子、この類まれな美貌、才能の持ち主の私が、負けるわけがない。あーりえない、有り得ない。ほーっほっほ。ない。ないないない。ない。ナッティング。おかしくって、腹で茶、抱えて、爆笑するわ。竹内涼は私のもの。竹内涼も私一筋。あなたのようなモテない女が、惚れられると思って?勘違いなさいますな。これ以上、近寄らないで。これ以上近づいたら、パパに言って、あなたのこと、追い払ってもらうから」
目立たないし、ドジばっかりだけど、クラスでは誰からも好かれていて、こけたり、失敗しても、エヘって可愛い笑顔の伊藤エリカ。
あどけない、無垢な笑みに、男子は釘付けで、学校一のイケメン竹内涼は彼女にいつも優しくて、硬派のくせに彼女にだけは甲斐甲斐しくって・・・
反対に、学校でも注目され人気があって、誰からも好かれている私が、何も構われず、優しくもされず・・・
可愛くて、超お嬢様でモテモテの私なのに、竹内涼はなぜか、伊藤エリカばかり構って、伊藤エリカばかり、優遇されて・・・
「いくら、言い寄られても、俺の気持ちは動かない。ごめん、君に付き合う余裕はない。あいつを守ってやるのは、俺しかいないから」
せっかく勇気を振り絞って、告白したのに、竹内涼は私の前からすぐに去った。
見たら、彼女の元に行って、頭を撫でていた。
「どうしたの?今日は変に優しい」
「ううん、何でもない。行こう」
そう言って、竹内涼は私を置いて、彼女と並木道路に消えた。
(なぜ?あのエヘペロごときが、竹内涼に優しくされてんの?)
私が負ける?そんな、馬鹿な・・・
沢島、振られたんだって?
あれだけ自信満々だったのに?
付きまとっていただけか?
犬みたいに、よくつきまとっていたよな。
ほんと、キャンキャン吠えて、付きまとって犬みたい。
ゲラゲラ、ゲラゲラ。
あの時から、私はジャー島、お邪魔虫の後追い犬、ジャー島犬。と呼ばれ、手下からも、誰からも付きまとわれなくなった。
2 城市登場
高校の時、私はお邪魔虫だった。
可愛い彼女を持つ、学校一のイケメンの恋愛を邪魔し続け、最後には盛大に振られた。
皆は私のことを、ジャー
お邪魔虫で、犬のように付き従う犬、邪魔島、ジャー島犬。
盛大に振られたら、あいつ、意外と弱いんじゃね?て言われて、噛ませ犬にしたら、弱い、弱い噛みつき犬と言われ・・・
でも、社会に出てからは、いったんリセットした。。
社会に出たら、違う世界が待っている。 社会に出たら、実力社会よ。力があれば上へ進めるもの。
学校ではお邪魔虫と呼ばれた私でも、会社では何をはばかることなく、出世街道を上がれる。こうなったら、社会に出て、出世だ。そう、思っていた。
「ねえ、沢島さんって、あの沢島さん?」
ただ一つ、誤算だった。それは・・・
あの高校の時の同級生たちが、同じ会社に全員、就職していた、なんて・・・
3 入って早々、キワモノ女上司を下して、出世する
大学卒業して、ようやく新しい人生の幕開けとなった。
でも、最初に出会った人は、かつての敵と、私に知る以上の強敵、厳しい上司だった。
「私に逆らう奴は、人事にそれ相応の話をするつもりだから。この新人教育係をなめるんじゃないよ。従わない奴は嫌いよ。次、礼。ほら、礼がなってない、もっと頭を下げて。私を誰だと思ってるの?」
その新人教育係は、厳しくて有名な人だった。
定規を手に持ち、気に入らないことをすると、バンバンと机を叩く。
似てる。同じだ・・・
まるで前の私と同じ。
「小松屋さん、なんで新人をあれだけいびるんですか?」
「そんなの決まってるでしょ。新人をいたぶって右往左往させた姿を見れたら面白いからに決まってる」
「なのに、なんで、新人教育係に立候補したんですか?小松屋さん」
「賢い奴が出て来て、私より出世したら嫌だからよ、最初に私の怖さを思い切り教えてやるの」
「小松屋さん、悪いですねえ」
「あなただって・・・ね?、越前谷さん」
いや、私と同じではない。単なるイジメ上司だ。
「なっ・・・何を、沢島。この新人教育係に向かって、そんな口をきいて良いと思っているの?」
私は噛みつき犬として、ジャー島と呼ばれた女。
所詮、血塗られた道。
何度でも、何度でも、同じことを繰り返すわ。それでも構わない。私に与えられた試練なら。私の運命だもの。何度だって立ち上がって見せるわ。何度だって、何度だって言うわ。私は沢島小夜子。この私をいったい誰と思って?
「ごまかしたって無駄。現金支払いの中からお金を抜いて、銀行に貯金していたの、私、見たんだから。最近、経理で帳簿の金が合わないって問題になっていましたが、毎月の提出分に大量のニセの領収証も入れてたんですね。毎月何万と、大した金額になりますよ。これは横領ですよ」
お、おい、沢島さん、そんなこと言って大丈夫か?本当か?
頭おかしいんじゃね、こいつ?
そういう声が各所から漏れた。
ざわざわ。奇異な目で見る大勢の見守る中、新人教育係の女は、人事部の役員に呼ばれた。
その後、彼女はすぐに退職した。しかし、それは長年勤める旧情があったゆえ、事件は穏便に処せられ、自主退職ということで済ませたらしい。
「沢島、君は総務部に配属だ」
そうして、私は新人教育係を下し、正社員として雇われることが決まった。
4 終わらない戦い、新たな試練、最大の強敵が出現
だが、私の取り立てに心良く思わない人間が一人。
「新入りが入りたてで、その会社の重要職員を下した?まあ、なんという怖れ知らずな輩だこと。そういうのは、会社の面子を傷つける行為だわ」
それは、ちょうどう取引の商談に来ていた、別会社の女社長だった。
自動車のヘッドガラスなどの部品を手がける会社で、うちより事業が大きい。人事へ口出ししてくる危険人物でもある。
中年女性だが、長い髪を巻いて垂らし、金銀のアクセサリーで着飾って、年を感じさせない豪奢な女性だ。が、見かけとは違い、相当に怖れられている。
「しかし、安達社長、今回は本当に悪い社員だったので」
「いえ、気に入らないわ。その新入り。表に出て、大勢の前で会社の年功者をぶっ叩いた挙句、己が正しい認識でいるのでしょ。我が社で大きな顔されたら迷惑よ。うちでは許さないわ。あなたのところにいるのも気に食わない。さっさと支店にでもやりなさいよ」
「ま、まあまあ、社長。入ったばかりですし、そこまで厳しくするのもどうかと」
「そうかしら?安達社長の言うことよ、従わなくて良いの?」
手下たちとなる部下たちも、化粧も完璧、豪華な高級スーツで完全に身を固めた、強力そうな女連中だ。
「本人に非があるとしても、会社の威厳を保つには、堂々と下すより、人事などによって表沙汰にならぬように、処理するのが望ましかった」
私は新たな敵に出会ったようだ。
獰猛な、噛みつき、人を蹴落としてでも己の好き勝手をする、この世でも最大の、女王蜂と・・・
5 捨て犬を拾う?
きゅうううん。
私だって強くない。誰かを倒したって、喜びもない、
どこ?子犬が泣いてる。
雨の中、私はどこかで泣いている犬を探した。それは私だったかもしれない。
木の根元で、雨に打たれて、冷たくて、悲しくて・・
どこ?子犬ちゃん。
「風邪を引くよ、おいで」
手を伸ばすと、その子犬は私の手を取り、立ち上がった。
大きな・・・子犬だこと。人間かもしれない、でも、あまりにショックが大きすぎて、私の目には何も映らなかった。
悪党女の最後を見たせいだ。目が雨で塗れているのか、涙なのか・・・
「今日はありがとう」
優しい低い良い響きの声。
「いいのよ、飼い主はいるの?」
「飼い主?いるかいないかと言われたら、まあ、一応、家がある」
「なら、良かった。はやく、帰りなさいよ。そんなに濡れちゃ、風邪ひくわ。あんまり自分を冷たい風にさらしちゃ駄目よ」
「君がね」
そのとき私はそっと、温かな上着をかけられた。でも、それが誰のものなのか、分らなかった。
私はそのままどうやって家に帰ったのか、覚えてない。
超豪邸の部屋にいつのまにか帰っていて、朝起きて、すぐ出勤の用意をしたから、昨日の雨の中でのことなど、忘れていた。
上着も、爺やが片付けたから、そんなものがあるってのも知らなかった。
再び、朝日が昇り、私の戦いの日々が幕を開ける。
6 ウィニングボールを君に
「あの女だけは、許せない」
あれ以来、人事部の越前谷が私の事を何かにつけて、心良く思ってないようだった。
「ねえ、あの女、また出て来たらしいわよ」
高校の時の私の手下たちも、こそこそと聞こえる内緒話。希望が通り、正社員になった私が、高校の時と立場を逆転させたから、気に入らないらしい。
(野球の声援の声と違う、声が聞こえる)
その日、会社行事の部署別野球大会があった。
まったく、社内の野球の試合で、私の悪口まで言うなんて、とんだ会社に来たものだわ。ま、美しく、才能があり、実力主義の中では勝ち誇る私だから、仲間からやっかまれるのだろうけど。
プロチームではないが、レクリエーションの一環で、我が社には野球チームがあり、トーナメント試合をやっている。
私ら職員は表向きは業務外だが、暗黙の圧力で応援に駆り出される。
ただ、天気の良い日に野球観戦となると、良い気晴らしになる。
近くの野球場に行って、カキンという音、試合会場の雰囲気に、私も楽しさを感じていた。
「部長、確認させてください。会社行事は業務外ですか、それとも業務上ですか?」
「ま、まあまあ、沢島さん、そう怒らなくったって。いつも、やってるじゃないか。単なる草野球の試合だから、あとは、居酒屋にしけこんで、皆楽しくやるんだからさ」
「部長らは良いですよ。そうしてしけこめば。でも、見てください。皆、しけこんで行くから、何も片付いてない。これ、後片付けするの、私らなんですからね」
試合場となったグラウンドには今はほぼ人はいない。皆、居酒屋へ行ってしまった。
「おいおい、沢島さん、言い過ぎでないか、相手、部長だっての分かってるのか?」
「やっぱ、噛みつくよなあ」
「いつも野球部員や応援団は先に、居酒屋へ行ってますよね、社長?」
「う、うむ」
「今日は社長もいらっしゃるのに、あいつは元気だな」
影でこそこそ言っていた同社内の職員。
私がぎらっと睨むと、すごすごと散っていく。
「四の五の言ったって、散乱したバッドやボールは勝手に片付かないんですからね。もっと片付ける人を増やさないと、ね、社長、そう言ってくださいよ」
「う、うむ」
気の弱い社長は、何を言ってもうん、とか、ううーんとかしか言わない。だから、弱気社長。いても役に立たないとか、うっとうしいと言われて、あまり尊敬されてない。
「社長、ああいうので大丈夫なのかな?例の買収会社の連中がまた、来てるんだろ?」
「知らね。売られたら売られたときさ」
無責任な会社連中は、影口までこそこそ言ってる。
でも私は言わない、言うぐらいなら正面向かって言う。黙ってこそこそするなんて嫌。
「あんたら、何を言ってるの?ちょっとこちらに」
と言いかけたら、私が社長にまで文句を言うと思った上司から、引き止められた。
「お、おい、沢島さん、いい加減、止めてくれ。特に社長は、社長には食ってかかるな。俺らが片付けたらいいんだな」
「仕方ないですねえ。部長らはもう居酒屋行ってください。あとは私らが片付けて置きますから」
「お、すまない、沢島さん。じゃあ、お言葉に甘えて」
「部長がもう待ちきれないみたいですから。放置して行ったら、グラウンドの人も迷惑でしょ」
「悪いね。じゃあ頼むよ。女子らはもうあとは、帰っていいから」
「はい」
ふん、おじさんらばっかりの居酒屋なんて、セクハラばっかりよ。誰が行くもんですか。
「あ、私、今日はお母さんの用事、頼まれてのだった」
「あ、ごめん。私、旦那が早く帰って来いって言うから」
私がせっせと業務外でも耐えて、セクハラ逃れのために、必死で片付けしているのに、その間に、一人二人と逃げて行く。人に厄介なことを押し付けて、あとは知らんぷりだ。
(卑劣者)
大手企業で合理主義かコスト削減か何かしらないけど、人に面倒なこと押し付けて、自分だけ得をするって風潮は消えやしない。
所詮、野球のボールやバッドの片付けなど誰もやらないのだ。私が言い出したから、これ幸いと、皆責任をなすりつけてしまった。
(ふん、野球なんて、居酒屋で美味しいビールを飲みたいがための余興じゃないの)
「今日のウィニングボール、これ、もらってくれる?」
その時、私の前ににゅっとボールが差し出された。
「え・・・?」
部署の中年の部長かと思ったら、目の前にいたのは、若い男性。
髪を後ろに流し、野球のユニフォームを着た、確か、見たことがある。
どこかで、最近、聞いたような・・・声。
どうだろう?百貨店でスーツを買った時の店員?服をかけてもらって、いえ、それか近くの食料品店のレジだったかしら?でも、私は思い出せなかった。
「城市くん?」
私はその男を知っていた。知ってて当然。同じ会社の社員だ。
それに、我が母校の生徒。同じ学年、同じクラス、元同級生。
つまり、伊藤エリカと私の同級生。
名前も知らなかった人物だが、この会社に来てからは知っている。まだ他にも私の高校の同級生が会社にはいるのだ。
それに、うちの会社が城市工業。という名で分かる通り、城市茂次郎はこの会社の社長の息子の息子だ。
「な、なんでここに?」
「い、いや、僕は一応、この会社の一員なんで、今日も野球チームに参加してたんだけど、そんな初めて会ったぐらいに驚かれても、ずっと君といっしょに勤めてて、毎日ぐらい会ってるよ?気づかなかった?僕、いてもいなくても同じって言われるけど、それだけ僕って、影、薄いかな?」
「い、いえ、何でもありません。すいません、よそ見していて、気づかなかったもので」
「ああ、よく言われるよ。高校の時も影の薄い奴と言われて、目立った人間でなかったけど。ええと、僕のこと、知ってる?僕は君のこと、知ってたけど」
高校の時に、こいつは、伊藤エリカを取り巻く一人だったはず。
私は記憶力は良い、頭脳優秀だ。一度見た顔は忘れない。普段は、思い出さないだけで。
私はぎくりとした。
「これ、今日、僕が打ったヒットのボール。久しぶりに良いボールが打てて、点も入ったから、君にあげる」
「え・・・?」
今まで一度も、こんな優しい声をかけてもらったことがないかもしれない、特に男子には。
でも、この人は学校のアイドル女子、伊藤エリカに、男子は誰も彼も夢中で・・・彼もその一人だった。はず。
なのに、そいういう奴が、なんで、私にボールを?
「高校の時、プロ野球をやりたかったけど、今は、会社で親元の仕事を継ぐために、見習い職員をやっている。これから、僕の人生は再生が始まる。その時、この打ち上げたウィニングボールは良いことがありそうで、嬉しかった。だから、君にもらって欲しい」
高校の時、他の誰もと同じく、伊藤エリカに惚れていたくせに。
そのライバルだった私が振られたのを見て、他と同じく嘲笑していたくせに。
「僕は君のこと、とても興味を持っている。いきなり教育係の闇を暴いてくれた人だもの、うちとしてはとても助かった。あの時から、僕は君のこと注目してる」
なんだか、私はその言葉にカチンと来た。
高校の時、あんだけ目立った私のことを知ってて、嫌味を言ってるの?誰からにも注目されたし、誰からも叩かれた。だから、いまだに興味を持っているってわけ?イラっとした。なんて嫌味な、冷酷な男。
「このボールを君に。僕もこれから社会に出て、仲間や同僚、気のおける人と共に、良い思い出を作って行きたいんだ。君とも」
「は?」
君?私?そういう私という個人を狙いに来ているところが、あの時のジャー島だって思っている証拠よね。だって、私なんて、噛みつき犬って言って、バカにした連中の仲間だもの。これ幸いと、私の弱味に付け込んで、何かを脅し取るつもりかも。
金?それとも、この美貌の持ち主をいっときの慰めにでもするつもり?超美人だから、狙ってるのね?それがお前のやり方か。
「あ、いや」
私がぎろっと睨んだら、その私にひるんだか、城市は押し黙った。さすが、気の弱い社長の孫だけある。
「い、いや、悪い意味はなく」
「悪い意味でないってのなら、私ならって、何ですか?」
「あ・・・え?あの、う、うん、君、なんか、怒ってる?今のところで、何。どの辺に怒ったの?」
「怒ってますよ、全部に」
意図は分からないけど、絶対、何か企んでいそう。ひるむ城市を見ると、何か魂胆があるって思った。私の眉間と鼻によったしわの怒りで、彼を黙らせた。
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