第13話 誰かと歩むということ
玲が消えてから数ヶ月が経った。
千尋の生活は、以前とはまるで別物になっていた。
残業を減らし、休日はしっかり休む。無理をせず、体の声を聞きながら毎日を過ごす。少しずつではあるが、その生活が「普通」になりつつあった。
そんなある日、同僚の悠人(はると)から食事に誘われた。
「最近、元気そうだね。」
「そう見える?」
「うん。でも、無理してない?」
その言葉に、千尋は少し驚いた。悠人は以前から優しい人だったが、こんな風に気遣われたのは初めてかもしれない。
「……無理、してないよ。たぶん。」
本音を言うと、まだ時々不安になることがある。
玲がいた頃の安心感が、今も心の奥で恋しくなることがある。
でも、それを誰かに打ち明けるのは少し怖かった。
「ならよかった。でも、もし疲れたら、ちゃんと休んでね。」
悠人はそれ以上何も言わず、千尋が話したいことを待つような穏やかな眼差しを向けていた。その優しさに、千尋は玲とは違う温もりを感じた。
玲は千尋の心に寄り添いながらも、どこか千尋を「止めよう」としていた。
仕事を休ませ、無理をさせず、千尋を守るためにそばにいた。
でも悠人は、千尋が自分の足で歩けるように、そっと支えてくれている気がした。
「ありがとう。」
千尋は、少しだけ肩の力を抜いて微笑んだ。
——誰かと歩むことは、依存することじゃない。
お互いに寄り添いながら、それぞれの道を進んでいくことなんだ。
そう気づいたとき、千尋の心に、そっと新しい風が吹いた気がした。
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