矢印に誘われて――超短編怪異譚集(その2)

ZZ・倶舎那

第1話 車窓の怪

 窓の外は密度の濃い闇だ。

 車内灯も明度を落としているが、それでも車窓は歪んだ鏡となり、見たくもない顔を映し出す。

 悪相の鏡像が消えるのは、街灯が現われた時だけだ。

 街灯は規則正しく現われては、地面を円く照らしながら走り去っていく。

 一つ、二つ、三つ……

 意味もなく街灯の数をかぞえ始めて十九番目。

 街灯の明かりの中に男の子が立っていた。

 七、八歳くらいだろうか、横縞のセーターを着て、茶色い半ズボンをはいている。そして、肩の高さに上げた右手を、列車に向かって振っている。

 その姿が車窓の隅に消えようとした瞬間、男の子は自分の首を両手で引き抜いた。

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