第6話
お好み焼き屋を出た私たちは二手に分かれることになった。
お兄とマリーベルちゃんは古書店が多く店を連ねる方へ、私とエリシオ君は観光と食べ歩きに。
「さっきお好み焼きを食べたのにまだ食べるのか?」
「小麦粉とキャベツなんて直ぐにお腹減っちゃうよ」
そんな話をしながら歩いて足を止めた最初の店はガチャポンが並ぶ店だった。
「コインを入れて回すのか」
「あ!これ可愛い!ちょっと回すから待ってて!」
色んな色のクリームソーダがモチーフになったストラップのガチャポンを回す。
「おっ、出て来た!わぁブルーだ、可愛い!エリシオ君も回してみる?」
「やめておく」
その返答に私は思わず考え込んだ。
実はお兄とベルちゃんから頼まれていることがあった。
出自のせいもあるけれど、エリシオ君はこちらに来てからずっと子どもらしさを見せないらしい。
もちろん、向こうの世界では既に家督を継いでいたくらいだからしっかりしていると言えば聞こえはいいのだけど、年齢らしさの無い割にベルちゃんから見れば無理をして見えるんだとか。
お兄は「緊張もあるんだろうけど、怖がっても見えるんだよね、何よりずっと肩に力が入りっぱなしなんだよ」と随分心配していた。
だから二人からはもう少し自由に力を抜けるようにとお願いされている。
私はうーんと考え込んでエリシオ君と店を出た。
商店街をあても無くぶらぶらと歩く、目に付いた雑貨屋や服屋などに寄ってエリシオ君の反応を見るが、全く手応えがない。
気疲れしてきた私の目にそのささやかな看板が目に止まった。
先を歩くエリシオ君の後襟を掴んで止める。
「あれ!食べよう!」
「ちょっと!く、苦しいってば!」
「ほら、行くよ!」
グイグイと引っ張って窓に迫り出したカウンター越しに声を掛けた。
「この苺チョコを一つと、どれにする?」
「……あんまり甘くないのがいい」
「じゃあ、シュガーバターを一つ」
看板に書いてあったのはクレープ屋の文字。
生クリームたっぷりの苺を頼んだ私はワクワクと店員さんの作業に目が釘付けになる。
溶いた小麦粉を垂らして専用の調理器具をくるんと回せば薄く広がった生地がゆっくり焼けて行く。
器用にひっくり返したのを「おおっ」と思わず二人して声を上げれば店員さんがクスリと笑った。
たっぷり生クリームを絞り、綺麗にスライスした苺が並べられていく。
クルクルと巻き上げて紙で出来たカップに差し込んで手渡された。
次いで直ぐに次のクレープを焼き始める。
ひっくり返した生地にたっぷりバターを塗り、粉ふるいを使ってブラウンシュガーを振りかけた生地をクルンと巻いて紙のカップに入れる。
「どうぞ」
「うん」
私とエリシオは店から少し離れて邪魔にならない位置に並んでクレープを食べ始めた。
「生クリームまろやかで苺の酸味がいい!」
「バターの風味と主張しすぎないコクのある甘さがバランス良くて旨いな」
エリシオの感想に私はウンウンと頷きながら自分のクレープを頬張る。
先に食べ終わったエリシオが私を振り返った。
「中途半端に食べたせいか腹が減った」
「ちょっと戻る?揚げ物の美味しそうな店あったじゃん?」
「ああ、唐揚げか……丁度いいな」
少しずつ緊張を解きほぐしていくエリシオに笑いながら答えて、私たちはまた商店街に戻った。
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