第5話

 三月に入り、悠から無事希望する大学への入学が決まったと連絡があった。

 卒業式の後直ぐにこちらへ来るというので、それならば迎えに行くついでにマリーベルを連れて行きたかった商店街に行こうと提案した。

 新大阪で悠を乗せたのは昼前になってから、久しぶりに会う悠は高校を卒業したからといって大して何も変わっていなくて安心した。

 そんな僕を置いて、悠とエリシオが初対面となる挨拶を交わし、マリーベルと再会を喜びあっていた。

 「ここからなら直ぐに着くから、向こうで昼ごはんにしよう」

 「私、お好み焼き食べたい!」

 「いいな、お好み焼きかぁ、確か自分で焼いて食べれる店があったはず」

 そんな、話をしながら着いたのは日本一長い商店街と言われていた商店街。

 一丁目から7丁目まである商店街は食べ歩きにも最適だが、今回はマリーベルが好きな本を見に行くのが僕のメイン。

 悠は買い物を、エリシオは見学をしたいのだと聞いている。


 コインパーキングに車を停めて、最初に向かったのは自分で焼けるというお好み焼きの店。

 案内された大きな鉄板付きのテーブルにマリーベルとエリシオが驚いている。

 「これはテーブルが鉄板になっているのか?」

 テーブルの下を見ながらエリシオがウンウンと唸る。

 そうこうしているうちに鉄板が温まって来た。

 運ばれて来たステンレス製の器にお好み焼きの材料が乗っている。

 僕が見本を見せるようにスプーンでかき混ぜて油をひいた鉄板に流して円形に形を整える。

 最後に豚バラ肉を乗せて暫く置く。

 僕の真似をしながらマリーベルと悠が、おっかなびっくりと覚束ない手際でエリシオが同じように鉄板にお好み焼きのタネを流した。

 ふつふつと泡粒が浮いては割れて行く。

 「そろそろかな」

 テコを両側から差し入れて「ホッ」と息を吐きながら内向きにお好み焼きを返す。

 「おおっ」

 三人が感嘆の声を上げたが今から君たちもやるんだよ?とテコを悠に渡した。

 恐る恐ると悠がひっくり返したお好み焼きは残念ながら崩れてしまった。

 「ああっ!お兄みたいには上手くいかないなぁ」

 「内向きに返すんだよ」

 「先に言ってよ!」

 不貞腐れる悠からテコを受け取り円形に直してマリーベルにテコを渡す。

 「内向きに、ですね……」

 慎重になりながらも上手く返したマリーベルからエリシオがテコを受け取りヒョイっとお好み焼きを返す。

 「上手いもんだなぁ」

 「これだけ見ていれば、まあ」

 満更でもない風に僅かに口角が上がるところは年齢らしい少年っぽさが見える。

 焼き上がるまでは押したり叩いたりしない、というのを悠に言いながらテコを脇に避けた。

 「お、押したくなる」

 「フワフワにならなくなるからダメだよ、押したからって早く焼けるわけじゃないんだから」

 膨れっ面の悠もお好み焼きが焼き上がりソースを塗ってマヨネーズをかけ、青のりと鰹節をかける頃にはご機嫌になっていた。

 「あっつ!あ、美味しい」

 エリシオが小皿に移したお好み焼きを食べて声を上げた。

 「うん、やっぱり自分で焼くと美味しいね」

 僕は小さなテコでお好み焼きを頬張った。

 マリーベルや悠にも好評のうちにお好み焼きを食べ切り、いよいよ商店街の散策に向かうため、お会計を済ませて店を出た。

 

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