ハルヒ•海舞《カイマ》ホテル
廃ビルから出ると、あからさまに怪しいハイエースに乗ってアジトと言う名のホテルへ帰るライカとカンジ。彼らは数時間前まである仕事をしていた、その仕事が一悶着つき、というか無理やりつけて我が家へと足早に帰っているのだ。
ハイエースに乗ってすぐはカンジがいつも通り 「カオちゃんさん」
と言う人にに連絡をいれた。
彼らが住むのは、表向きにはハルヒ・
実は悲しきことにそれすらも怪しい、なぜならハルカイは闇市から仕入れた情報を警察組織に横流ししたり普通に警察にも頼まれごとを頼んだり頼まれたりしているから、
警察寄りの組織––––寄りどころか元の元は規模と立場故に細やかなグレーを取り逃さずおえなかった警察が秘密裏に立ち上げた組織だ
つまりはただの、カリスマ的魅力と知能をもつ何者かが、確立された地位のため今までの信頼を警察に売って対等になろうとしている、と言う程の警察が作り上げたもう一つの表に書かれない部署である。そのためにハルカイの私たちの上司は、あまり詳しく知らないが元刑事、不祥事を起こした元警察官などが流されてきていて、警察が出来ないようなことを沢山任されてるのだ。そしていざとなれば組織ごと切り離し責任をなすり付ける。
そんな彼ら曲者元刑事達が抱えるのは、アウトローに足を踏み入れてしまい戻れなくなった若者や、本人たちは何もしていないのに過去のしがらみや立場、彼らに行われていた事の有無で表に出れない。一般に馴染めないなどの理由を持つ少年少女たちだった。
痛みで目が覚めると運転手の線海のねえちゃんに止血と消毒だけされた頬を触る。
今こうしてハイエースに揺られながらも痛みで中々寝れずボーとしているライカや、無傷ゆえにいつの間にか爆睡しているカンジもそのうちの子だ
ライカは自身は頬の傷による痛みで全く寝れていない、なぜなら生きていれば多少の切り傷は受けるがこれほど大きくえぐれるほど切れるという痛みを今まで味わってこなかったから、ゆえに何もしていないカンジが爆睡していることに腹が立っていた。
何かイタズラを仕掛けてやろうと頬を柔く触りながら考えるがなにも出てこない、第一コイツはヘラヘラ笑って意外と社交的なだけで怒ったら怖いのだ。正直なところ寝起きで睨まれたり、舌打ちされたら嫌だ。
だが、この痛みによるイライラと色んな鬱憤をぶつけたいと迷っていると角を曲がり建物の隙間からホテルが見えてくる、ライカはそれを良いことにカンジの脛を蹴る。
イッ
着いたよ
同僚に無様な姿を見せる前に起こしてやったんだこれならお前も文句は言えまい。少し憂さ晴らしができてニマニマした顔を隠すように窓を見た。
おい、初めて傷つけられたからって俺に当たるんじゃねーよ。
やはり気づかれていたか 無言で答える。
反応が無いせいで、仕返しのようにカンジはいつもの癖で頭を撫でてくる、まるで小動物をワシャワシャするかの様に
馬鹿にしないでほしいといつも思う
そもそもが小さいとよく言われてしまう実際130センチギリギリだ、なぜか分からないが普通よりも早く成長期が終わってしまった。
ライカは外見だけなら品のいいまだ小さな子だが、中身は大学生間近の高校生
ので外仕事と言うバイトを終えたら次にホテルでの従業員として仕事が遠慮なく待っている。
つまりハイエースでの移動時の数十分間が睡眠時間だ、このままでは上層部が子供に仕事をさせた挙句無茶なシケジュール組ませてるように見えるが、私たちは一般人よりあまり睡眠を必要としない。最初こそ一般的な睡眠時間を組まされたが、身体に合わない長時間な睡眠も身体に悪いのと。単純に短い睡眠時間でも、ちゃんと体が成長し健康的に動いていると診断されてこのスケジュールになったのだ。
だが、今のライカには関係がない何故なら寝れていないから。これは危機だ、ライカは焦ったただでさえ本業であるホテルの仕事は正直向いていない、今やってる部屋の清掃も相方のヨルハルに苦笑されて上手いことフォローされてばかり。そもそも相方がオールラウンダーなヨルハルなのも私が基本ろくな事をしないという信頼があるからだろう。
だが不思議なことにこんな出来の悪い社員をめげずに働かせてくれるのは何故だろうか。
たまに仕事で失敗した時一瞬考える、クビを経験したことの無い私はいつかここを追い出されるのかな、ここすら居られなくなったらどこに行けばいいのか分からないな、と。
ボーっと考えているとハルカイが所有する駐車場の従業員用の入り口が開く。従業員入り口にハイエースごと入ると、中には数人の休憩中の同僚たちが出迎えに来ている、心配して来たというより電話の内容にひかれた野次馬根性だろう なんと言っても今回の斡旋相手が過去に大規模で無慈悲な人体実験を行っていた連中、彼ら自体は何年も前に検挙され解体されている。
ちなみにそこで保護されたのが私たち、今回取引に関わったのも自分の意思で志願した。たぶんカンジも同じ理由だと思う。彼らが私の事を覚えているのか気になったから関わった、そんな些細な理由だっただが行ってみれば私を覚えている人は居なかったし私が知る人も居なかった。上司の命令通り、泳がせるためにそこでは捕まえず邪魔が入ったので足早に返した。正直泳がせるなんて警察でも出来る気がしたし第二の被害が出てしまうのではとも思ったがそれを言う権利を私は持ち合わせていない。
その時の邪魔が私たちと同郷の少年だった、一目で分かった あの顔は
後に現れた少女も腹立たしい限りだが私のナイフを見切った様に逃げた、あれは言い切っていいただ偶然あの場にいて巻き込まれただけの一般人じゃない。自分の意思で来たのだ あの男の子を助けるために。
この異例の事態をカンジはクスリという上司に伝えていた、だからこの様だ
ハイエースが駐車するとカンジの先輩、ルイが食いつく様にハイエースの扉を開けて眠たげなカンジを引き摺り出す。
その横にはいつも通り私より無口で無表情のアラタが突っ立っている
私も降りるとユズねえが出待ちしていて捕ってしまった、ユズねえはヤネミちゃんに救急箱を取ってくるよう頼んでいるらしい
で、なんか得ることは出来たかい?
無いと分かっているくせに先輩ルイがカンジに収穫はあったか聞いてくる
無い惜しいとこで取り逃した
お前が?
ルイが疑いの目をカンジに向ける。
取り逃すなんてお前らしく無いどうせサボってライカに任せきってたんだろ
ライカは横目で見る、さすが長年の友達だ。
当たり前じゃん?あんな奴らのためになんで体張らなきゃダメなんだよ
ライカは分からなくはない、と正直思った、あのままあの少年に潰されたほうが私たち的には気分が良かったのは確かだ。だが
そうだよカンジだけサボってた、私だけが働いてたのに。コイツと一緒にあのおっさん達に叱られる 気にくわない
お前珍しく饒舌だな。
よほどムカついてたのね。
ルイとユズねえが私を見るのでここぞとばかりにジト目で応戦した
おっさんて もうちょい丸くならんかねライカくんバレたら絞られちゃうぜ。あとこの無傷は君のためだよ?
カンジが変なことを言い始めた
私はまたもオデコにシワを寄せあからさまな嫌な顔を作ってみせると、カンジは笑い始める単純なヤツ もうすぐカナメやクスリが降りてくるはずだ
ライカとカンジがハイエースで揺られていた頃 ハルカイホテルにて
カナメはカンジのかけた電話について、少しの引っ掛かりを覚えていた。
「仕事自体は無事成功しました、死者は出ましたが––邪魔が入ったんです、二人です。片方は俺もライカも身に覚えのある顔でした、おそらく俺らが斡旋していた連中を潰すために差し向けられたものだと思います。
もう片方は少女、こちらはハッキリ助けると言っていたのでおそらく少年の友人だと思います。その少女はライカの動きを知っていたように動いてた、ライカを負傷させたのは少年の方ですが–––– ともかく、詳しくは帰ってからまた話します。俺も気になる事山ほどあるので もちろん教えてくれますよね?」
どうしましたカナメさん
ハッとしてズレた丸メガネを直しながら声の方を見ると届原ワタルが同じく難しい顔で話しかけてきていた。
そんなボーッとしてちゃ階段転びますよ。
えっ?と思い足元を見るとあと一歩で転びそうな階段の目の前だった。
届原は自分の隣から頭を出し楽しそうに話しかけてくる男を呆れながら見ている。
楽しんでるよね空々根くん
私が届原くんの顔を横目で見ながら空々根くんに聞いた、彼はハルカイに居る時間が長いせいか少し配慮に欠けた態度を示すことがある、まだ日の浅い届原くんは元の警察官としての正義感なのか空々根の態度を受け入れられていないらしい。だが結局は時間の問題だよなとカナメは思った、慣れるまで警察官としての正義感と葛藤する羽目になるが。
そうして辞めていった、消えていった同僚をいくつも見た、ようは自業自得だこんな地獄に来てしまうような事をここに居る大人はみな手を出してしまっている。
そりゃあ こんな事今まで無かったですからね。カナメさんやワタルさんだって人並みのモラル故に見せないだけでワクワクしてるでしょ?わたしは人より正直なだけです。
ワタルはハジメの相変わらずな態度に諦め会話を続ける。
それでカナメさんカンジが電話で言ってた少年と少女とは やはり。
まぁ十中八九あの研究所に居た子供の一人でしょうね 少年の方はですけど
空々根が聞いても無いのに会話に頭を突っ込んでくる 私はマズいなあと思いつつ届原に再度目を向けると意外にもさっきより冷静な顔をしている。
少年の方は?では少女は?
冷静どころか質問すらしている、私は思った彼は相当柔軟だな、と。
分からない、としか言えませんね。電話の直後保護直後の記録を探ってみたんですが、それらしいのは–––
ちょっと
三人で考え込んでいると前に居る薬凪カオルが歩く速度を合わせて話しかけてきた
もうすぐです。あまり彼らの前でその話をしないように
薬凪は言葉通りの神経質さを微塵にも感じない雑で気だるげな雰囲気で私たちを注意した
そんな気にすることですかね?彼らこれくらいならもう薄々勘づいてるんじゃ
空々根が不思議そうに薬凪を見る、私も不思議に思っていると届原も同じなようだった。
いえ、そこじゃなくてです。彼らの前でこんな話してたら次の仕事どころじゃないでしょ。
今だってきっとルイ辺りがライカとカンジに戯れついてる。
詳しいですね薬凪さん
ちょっと前までは俺が面倒見てたので
そっか、私はその言葉で彼の雑な態度が腑に落ちた気がした。私たちは彼らについて薬凪さんほど詳しく無い 上司として仕事の伝達とケアをするだけ、シルエットとして過去起きた事件の被害者、と言う認識の方が強い。
でも彼は違う、助けられてまもなくこの場所に来た彼らをずっと面倒を見ていた。被害者以上にただの世話の焼ける子供たちなんだ。
カナメさん 考え込むのは今じゃ無いですよ
薬凪が地下駐車場に続く扉に手をかける
あーまただ、この人ぽけっとしてる癖に人のこと凄く見てるなと少しソワソワした。
すみません
謝って欲しいわけじゃありませんよカナメさんはライカに好かれてます、彼女は今回初めての負傷でカンジが言うに不貞腐れてるそうなので 上手いこと聞き出してやってください
初めてって、、
届原は薬凪の言葉に驚いているそれを見る空々根が
それを言うならこんな裏仕事任せてること自体おかし話なんですがね。
それは挙手性です俺たちも最初こそ普通の子として道を踏み外さないよう努力しましたが、俺たちが思っているよりも彼らは手の施しようの無い道に立っていた。今の状況さえ俺は最善だと思ってますよ。
薬凪は言い訳のようなどうしようもなかったことが滲み出たような声色で答え扉を開け切った
視線の先では、ただの子供たちがただただ戯れ合っている
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