一話 出会い 9月13日

よく晴れた朝 だが欠かさずテレビの天気予報を見る 降水確率0%か 行けるか?  

私は傘を持たず学校へ走った。







相葉イサオです。男です よろしく

イサオと言った この旧セーラー服を着て首をくすぐる程の髪をなびかせる少女は、少年だったのだ。 

頭を上げた彼の目から私は何も読み取れなかった

朝の会が終わりI時間目が終わり、吸い寄せられる様に彼のもとに皆が集まった私もその一人 一人の女の子が反射的に聞く

「ねぇどこからきたの?」

よく見る王道な質問、彼は少し瞳を泳がせスカートのすそを弄る 

「覚えてないの? じあなんでセーラー服着てるの?」

「それは、家が貧乏だから姉さんのお下がりきてるだけ」

「男なのにスカートいやーとか思わねぇの」

一人の男子が不思議そうに問う

「思わないよ 小さい時から姉のばっかり着てるし 慣れると楽だよ」

「あー!わかる私も小さい時兄ちゃんの服お母さんに着てろって言われてた」

でも小学校の制服まで姉の着るか?

不思議に思ったがそういう家もあるのかな

その後も次々に質問が投げかけられた、

好きな食べ物はーとか

嫌いな事はなんだとか

前住んでた場所は田舎か都会か

お姉さんはどんな人か

なんで引っ越してきたのか

今住んでるのはどこか

なんでそんなに表情が変わらないんだとか

イサオくんは返せるものだけ返した

好きな食べ物はおにぎり

嫌いなことは雨が降ること

前いた場所は覚えてない

姉は僕に似てない明るい人

引っ越したのは僕だけ


知らん

イサオくんは丁寧に質問に答えたが前いた場所と今住んでる場所は目を逸らしはぐらかし黙り込んだ 皆踏み込み過ぎたとうっすら思った時、私は興味本位で聞いた

「特技は?」

すると彼はこちらの目をまっすぐ見て言った

「未来が見える」

皆が固まった何を言っているんだと 反応に困り口を開こうとした時

チャイムが鳴った


2時間目が始まり黒板を見ながらノートを埋める だが私の頭はさっきのイサオくんの言葉で埋め尽くされていた。質問の鬱陶しさから皆を引かすために行ったのではないか、それとも私たちが踏み込み過ぎた結果悪くなった空気を良くしようと冗談混じりに言ったのか

それとも本当に未来が見えるのか....。



6時間目が終わり皆がランドセルを取りに行ったり 配布物を整理したりしていた。

あの後イサオくんに質問する人は居なかった

当たり前だ未来が見える見えない以前に時々質問に対して言いづらそうにしていた。

これ以上は良くないと小学生ながら理解している。 未来が見えると言った彼を不思議に思い腫物を扱うように接した子もいた

クラスが妙な空気に包まれている。

この澱んだ空気を察してか空の色も暗くなっている。

「雨 あと5秒くらいかな」

え?

クラスのみんながイサオくんを見るそして彼がじっと見ている時計を私たちは流れるように追った あと2秒 咄嗟に私は時計を確認しながら窓を開けようと近づいたそして気づく


窓は濡れていた


雨は降った 彼はスマホなんて持っていないテレビもついてない

偶然か?

いや違う見たんだ未来を、他のみんなも各々いろんな反応をしていたが 一貫して目が期待に満ちている私も少しの期待を胸にイサオくんを見た。だが当のイサオくんはゲンナリした様子でため息を吐いていた 表情は変わっていないがとても嫌そうな雰囲気をだしている。

私は思い出してなんとなく聞いてみた

「そういえばささっき雨嫌いって言ってたもんね 未来が見えるって嫌だと思うことが見えるの?」

急に話しかけたからか驚いたようにこちらに振り返る

「逆にさ なんで嫌だと思う未来が見えると思うの」

まさかの返しに頭を捻ったがとりあえず思った理由を答えた

「よく漫画でさ未来が見えるってキャラいるじゃん。現実でもたまにさ、そんな人はふと見えたって感じだけどもしかしたら見えるきっかけが気付けないほど些細なだけであるんじゃ無いかなーって私思っちゃうの」 

今の私の目はきっとどんな宝石を見る時よりもキラキラなんだろうイサオくんの反応が物語っている。

「多分だけどさ、僕は嫌なものが見えるんじゃなくて 未来で心が動いた時にその出来事が見えてるんだと思う」

「今回の雨も?」 

「うん 僕雨嫌いだから」

「心が動くほどってよっぽどなんだね」

後ろから男子が話しかけてきた、

イサオくんは少し驚いたようで反応に困っている。


 


















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