第4話 義理の妹
2階建てのアパートに辿りつく。
通村は大家に見つからないように、急いで部屋の鍵を開けた。
リリン、リリン、リリン
突如、通村のスマホが大音量で着信を知らせた。
通村は室内に飛び込むと、急いで玄関の鍵を閉めた。
着信相手を確認すると、義理の妹である「みさき」だった。
みさきは義理の母の連れ子で、気立てがよく、通村のことを常に心配していた。
「もしもし」
通村は存在を隠すように声を潜めた。
「あ、お兄ちゃん、今、大丈夫?」
みさきは血の繋がっていない通村のことを「お兄ちゃん」と呼んでくれた。
そのことが通村には嬉しく、だが同時に出来損ないの義理の兄であることを申し訳なく思った。
「どうした?」
「特に用事はないんだけど、今、お兄ちゃんのアパートの近くにいるから、会えないかなと思って・・・」
「ああ、構わないよ。俺はいつだって暇だから」
通村は自虐的な笑みを浮かべた。みさきの優しさに甘えてしまいそうになる。
でも、それはみさきにとって、そして通村にとっても良くないはずだ。
「そういう言い方をしないの。お兄ちゃんは自分のことを卑下しすぎだよ」
電話口からみさきの悲しそうな声が聞こえる。
またやってしまった。通村はスマホを持っていない手で額を押さえた。
心配してくれる相手がいるというのは喜ばしいことだ。
誰にもかまってくれなくなったら最後。もはや存在を忘れさられているということだ。
「ごめん、俺も色々とばたついているんだけど、久々に可愛い妹の顔を見たい」
通村なりに精一杯気をつかった言葉が、下手な詐欺師の引っ掛け文句のようになってしまう。
「しょうがない。可愛い妹の顔を見せてあげるよ」
みさきはおそらく笑顔なのだろう。声が弾んで聞こえる。
「じゃ、駅前の喫茶店で会おう」
「わかった。お兄ちゃん、ちゃんと来てよ」
「行くよ、俺もそこまで酷い人間じゃない」
どうしても卑屈になってしまう。おそらく癖になっているのだろう。
電話が終わり、ほんの数十分で通村は義理の妹と久しぶりに再会を果たした。
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