小説の持つ誠実さとは
- ★★★ Excellent!!!
いくら「おもしろく」ても、「好きになれない」小説はいくらだってある。誰かに読んでもらったり、「発表」を目指した瞬間から「相手にどう思われるのか」という相対的な価値観を、自分だけのものだった「小説」に付与してしまう。
告解室での懺悔と、完全に同じにはなりきらない理由には、そこに、聞く実体(ときに権力をもつ組織だったりもする)が複数存在してしまうという致し方のない構造もあると思う。
でも、
「どんな小説家でいたいですか?」
そんなことを尋ねられるとき、
わたしはまだ、小説家になったとはいえないけれど、この先も書くのであれば、と前置きをした上で、
「自分に対しても、読者に対しても、誠実に書いていきたい」
と繰り返し答えてきた。
その答えが含む「誠実さ」については、補足しないできた。だって面倒だったから。
わかる人にはわかるし、わからない人にはわからない。それでいいと思ってきたから。
だからわたしの答えを聞いた人は、するりと流したり、深い意味を感じとらなかった人たちでいっぱいだと思う。
物語には創作性があり、そこには虚構があるけれど、創作された世界の中に、嘘は書かない。
これは私も一番大切にしてきた部分だった。
今、このエッセイのような、真摯で愚直で、美しい言葉たちに出会えてよかった。私の心の真ん中に、届きました。
ありがとうございました。