三人官女は今年もかしましい

木曜日御膳

東京のとある家

 雛祭りの日、雛人形たちは今年も目を覚ました。


「お久しぶりですぅ、提子ひさげさん、三方さんぽうさん!」

「お久しぶり、長柄さん。今年も会えて良かったわ」

「これで三人官女は揃ったわね」


 雛壇の二段目、やっと目覚めた正面右の長柄を、真ん中の三方と左の提子は嬉しそうに迎えた。

 年に一度の再会、話したいことは山ほどある。


「そうそう、長柄さん、聞いて! 三方さん、大変だったのよ!」

「ちょっ、提子さん! まぁ、首が少し取れかかっただけよ」

「ええ~!?あぶなぁ~い!」

 毎年やかましい二人に挟まれ、三方はため息をつく。だが、話題はすぐに別の方向へ。


「でも、まさか五十年も一緒にいられるなんて、思わなかったわね」

「本当ねぇ。この家の一番若い娘も、もう三十過ぎ。恋人もおらず立派な行かず後家」

「あら、提子さんだって、いい人いないじゃなぁい」

「私は長柄さんみたいな、『鼓で世界を取る』とかいう夢見がちな男は無理なだけ」

「だぁりんの悪口?」

「二人とも、いい加減になさい」


 今度は口論を始める二人に、三方が鋭く注意する。彼女の口の隙間からは、お歯黒がはっきりと見えていた。


「長柄さんはさておき、提子さんは右大臣とはどうなの?」

「ええ~でもこう、決め手がなくて」

「決め手なんて待ってたら、お内裏様の二の舞よ。五十年目だってのに、接吻の一つもしてないんだから!」

「三方!」


 まさかの飛び火に、三人官女の上からお内裏様の嗜める声が飛んでくる。


「お雛さまも本当に可哀想に」

「意気地無い男はもっとねぇ」

「わかる、むりぃ~」

「お前ら!」


 更にお内裏様が声を上げるが、三人が止まるわけもない。


「それもこれも教育係だった左大臣が、ぼんくらなのが悪いのよ」

「す、すまん!?」


 沈黙を貫く五人囃子を通り越し、三方は旦那の左大臣へと矛先を変える。怒られ慣れてるのだろう、驚きながら謝罪する姿は哀れである。

「さすが、鬼嫁」

「提子さん! ぼんくら相手には、鬼嫁にならざる得ないのよ!」

「お雛さまも見習わないとねぇ」

「わ、私も!?」


 遂には、頬を赤らめ身を小さくしてたお雛さままで飛び火する。


「今年こそ、絶対に、お雛さまを幸せにして貰いますよ!」


 どうやら、今年も三人官女はかしましいようです。

 

 

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三人官女は今年もかしましい 木曜日御膳 @narehatedeath888

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