第4話 ぼくだけのアイドルの光臨

 十六年前の謎の大量死事件、手っ取り早く知るには、どんな本読むのが一番かな?

 図書室の本棚探しても、全然知恵が回らない。普段、図書室で本読まないし。


 当てもなく本棚の間を彷徨うと、地元の地方志が目に入る。十六年前っていうと、S和XX年だな。ちょうどXX年巻がある。


 本棚に手を伸ばしてみる。

 あっ?……柔らかい絹のような感触が伝わる。触れるだけで幸せ。甘い匂いが鼻腔を擽る。もしかして……あのひとっ?

 やさしい鈴の音が耳の奥に響くっ♪

「ごめんね。お先にどうぞ」

「こちらこそ、すみません。どうぞ、どうぞ……」


 時間が止まってしまった。心臓まで止まりそう。

 僕のまじかに、あのお方がいらっしゃいます。あのお方が息を吐くたびに甘い匂いに包まれる。酔っぱらうって、こういうことなのかな?


「そんな本手に取るなんて、あなたって勉強家なのね?」

「とんでもないです。ちょっと暇つぶしに読んでみようかと」

「暇つぶしに難しい本読むなんて本当の勉強家よ。将来は大学教授かしら?」

「僕なんて、大学行くのも夢のまた夢、大学芋食べるので精一杯ですよ」

「とても謙虚でいらっしゃるのね。まるで上杉謙信公の生まれ変わりかしら?」

「いえいえ、僕なんて、せいぜい中山馬鹿之介ですよ。あなたこそ、出雲阿国かお市の方様、果てや玉藻前さまであらっしゃりますか?」


 長い睫毛の下から涙が零れ落ちてる。なんか悪いこと言っちゃったかな。どうしよう。なんて謝ればいいんだろう?


「ご、ごめんなさい。何か気に障ったのなら、何でもお詫びします」

「謝らなくて好いのよ。こんな利発に育ってくれて嬉しいわ」


 これって夢?

 細腕で抱きしめられている。体中に温かさが伝わってくる。夢でも幻想でもない。今まで生きていて一番幸せな体験かもしれない。夢なら永遠に覚めないないで欲しい。このまま死んでも悔いが無いかも……?

 意識が遠のいていく。本当にするのかも。座布団何枚もらえるんだよ……。

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