第46話 秘密がばれた

【宮城翔】

 

 テニス部の佐々木さんが、思い出したように立ち上がって、

 「そういえば、末広さん、宮城君と具志堅さんが、足が速い事、もう先生達にばれてるよ」

 

 「どういうこと?」

 

 「だって、陸上部顧問の森先生が、宮城君と具志堅さんを陸上部にスカウトするって言っていたから」

 

 「佐川!工藤!」

 末広さんが二人に顔を向けた。

 

 「オレは、言ってねぇぞ!!おばあちゃんに誓ったからな!!」

 真のおばあちゃん困ってるだろうな。


 「ワタシは、断じて誰にも言っていません!!ワタシは皆さんの足を引っ張るようなことは決して致しません!!昨日一条さんに誓ったばかりです!!お忘れですか!!??」

 その誓い、一条さんは知ってるのか?


 それからは、クラス中で、誰が犯人か揉め始めた。そこに、今村先生が入ってきた。今村先生は、かなり機嫌が良さそうだった。

 「どうした末広さん、何かあったの?」 

 

 「先生、宮城君や具志堅さんの足が速いことが先生方にばれているようなんです」

 

 「え、言っちゃいけなかったの?」

 

 「当り前じゃないですか。他のクラス、警戒しますよ。まさか!話したんですか!?」

 

 「話したよ。職員室で」


 「どうしてですか」

 呆れてるな。末広さん。


 「でも一番になると言っていたから」

 

 「そうです。だから他のクラスは『一組は何馬鹿なことを言っている』と油断していて欲しかったんです」

 

 「何やってんだ、今村!」

 真が、大きな声を出した。

 

 今村先生は、

 「ごめん、みんな、足を引っ張ってしまって」と、また下を向いてしまった。

 

 俺は、

 「ばれてしまったことはしょうがないよ。みんな。勝てるように作戦を立てればいい」

 

 「宮城君、ありがとう」

  

 具志堅さんが俺を見て、ピースサインをしていた。今村先生は、救いを求めるように、具志堅さんを見た。


 「いいんじゃない、ばれても、勝つよ。先生、前を向きなさい!」

 

 「ありがとうございます!具志堅さん!!」

 いよいよ敬語になっているよ、今村先生。


 少し落ち着いた今村先生が、

 「今日の放課後、クラス委員長と副委員長が視聴覚室に集まって運動会の競技の配点の改定をすることになっているから、佐川君、末広さん参加してください。」

 佐川と末広さんを見て言った。

 

 末広さんが、何か気が付いたように声を上げた。

 「どうして、急に競技の配点を改定することになったんですか。もしかして、言い出したのは、粗根田そねだ先生ですか」

 

 「そうだけど・・・・・」

 今村先生も何か気づいたのか、みんなを見渡して、最後に具志堅さんを見て、

 「みんな、ごめん」

 と謝ってきた。

 

 「あの妖怪ババァ、何やらかすか分かんねぇぞ」

 真がみんなが思っていることをはっきりと言った。

 クラス全体が静まり返ってしまった。

 

 俺は、

 「何があっても勝てるように準備をしよう。みんな大丈夫だよ」

 とみんなを励ますように声を掛けた。

 何があっても負けられない。みんなと一緒に勝つんだ。これしかない。

 みんな俺を見た。

 具志堅さんが声を出さずに笑っていた。

 

 具志堅さんが、今村先生を見ながら、

 「面白くなったさ。これで勝つからすごいわけさ。みんなやるよ」

 と楽しそうに言った。おばぁ、本気で楽しんでるな。

 

 佐川が

 「具志堅さん!!ワタシは!今!あなたを一条さんの次に尊敬することにしましたぞ!!皆さん!!具志堅さんの仰る通りです!!ワタシたちは!必ず!必ずや!!勝利します!!いえ!何が何でも勝利するのです!!優勝の栄冠を我々の手に掴むのです!!」

 佐川が力強く熱弁をふるっていた。

 具志堅さんは、びっくりしていた。


 今日の授業は、みんなテンションが高かった。

 特に、具志堅さんが授業中に指されると、一斉に具志堅さんを崇拝するように見ていた。

 具志堅さんは真っ赤になっていた。


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