第42話 どの衣装が着たい?

【宮城翔】


 今度は、誰がどの衣装を着るか決めることになった。

 

 真が、

 「女子から決めるぜ。まずは、巫女さん。我妻、大矢、栗田、伊吹、小西で。次  

 に、うちき・・・」

 

 「工藤、ちょっと待って」

 宗方さんと言う女子が、真を止めた。


 「工藤が勝手に決めるわけ。それに、選出に何か訳があるんじゃない。」

 

 「オレが似合いそうだなって思う奴を選んでるだけだぜ。」

 

 「ふーん。」

 

 その様子を見ていた末広さんが

 「嫌な予感がする。」

 と目を細めながら真の様子を見ていた。


 加藤さんが、宗方さんに近づいてきて、ルーズリーフの1枚の紙を渡した。

 宗方さんの顔が、ぱっと赤くなって、そして、

 「加藤さん、ありがとう。こんなかわいいデザイン画を描いてくれて。私、巫女さんより、壺装束つぼしょうぞくがいい!」


 今度は、末広さんに紙を渡した。

 「これ、私、うちきを着ているんだね。可愛くてしっかりした女性なの?」

 加藤さんは、うなずいた。


 俺も、横から覗いてみた。そのイラストには、末広さんが強い覚悟を持った芯の強い女性として描かれていた。

 

 女子が、具志堅さんと加藤さんの周りに集まり始めた。

 「かわいい、ありがとう、加藤さん!」

 

 「壺装束つぼしょうぞくいいよね!」

 

 加藤さんが、

 「着物の柄は、持ってきた布で決めるから。また、その時にイラストに色や柄を付けて、描き直すから。」と周りの女子に伝えていた。


 「本当!加藤さん、ありがとう!」

 

 真が、

 「女子は、末広と加藤に任せれば、大丈夫だな!後は、男子をどうするかだ。」

 

 佐川が手を挙げた、

 「庶民の役は!庶民のおさであるワタシが決めましょう!まずは、村田君!」

 

 村田が、

 「おい、待てよ。なんで俺が、庶民なんだよ。イラストはあるのかよ。」

 すると、加藤さんが佐川にルーズリーフの紙を渡した。

 

 真が

 「加藤。佐川には直接渡せるんだな。よく分かんねぇやつだな。ま、いいか。」

 

 佐川が、

 「ワタシが、指名しようと思っていた方々とまったく同じですね。さすが、加藤さんです。」

 「では、読み上げますよ。村田君、藤田君、岩田君、塚本君、福中君、井沢君と庶民の長である私を含めて、7人です。」

 

 藤田が、

 「本当に、加藤がイラストを描いてあるのか?見せて見ろよ。」

 と言って、佐川の持っている紙を見た。


 俺も覗いてみると、

 『時間がないから、庶民のイラストは後』と文字で書いてあるだけだった。

 

 「俺…、佐川以下か?」

 藤田は首をもたげながら、席に戻っていった。

 

 続けて、真が、

 「庶民の衣装は、加藤のイラストから、オレが体操服をアレンジするから安心しろ。」

 

 村田が、

 「なんで体操服なんだよ!」 


 「村田。ここに来て、佐川のイラストを見てみろ、矢印で、体操服って書いてあるだろ。」

 

 村田はショックのあまり、教壇の傍でうずくまってしまった。

 

 ほかの庶民役も

 「俺達は庶民だからな。イラストすら描いてもらえないんだな。」

 「長に○よりはマシなんじゃねぇの。」

 「お前、悟りすぎだろ。」

 「こうなったら、佐川よりひどく無けりゃいいや。」

 投げやりになっていた。


 「大丈夫だ。オレが、最高の筒袖つつそで括袴くくりばかま作ってやるから!」


 「いいよな。工藤は庶民じゃないから。」 

 そう言うと、村田は席に戻っていた。

 

 真が、

 「甲冑かっちゅうを着る武者を決めるぞ。庶民と同じように、最初におさを決めよう。翔、侍のおさは、何ていうんだ?」

 

「侍大将だな。平安時代以降からは。」

 

「じゃ、翔で決まりだな」

 

 すると、大石が手を挙げた、

「侍大将は、やっぱり身長が高い方がいいんじゃないか、見栄えするし。このクラスでは一番、僕が高いけど。」

 

 すると、加藤さんが、急いで俺に近づいて、俺にも、1枚のルーズリーフの紙を渡した、そこには、鎧を着た俺のイラストが描かれていた。

 俺、こんなに勇ましいか。

 

 真は、

 「加藤のイラストを見てみろ、翔で決まりだ。お前、身長が高いだけで、勇ましさがないんだよ。」

 

 イラストを見た大石は、

 「確かに、宮城君は、勇ましい感じがするよな。で、僕はどうなるの?」

 と、尋ねてきた。

 

 加藤さんが、また、俺にルーズリーフの紙を渡した。

 その紙には、

 直垂:大石君、長谷川君、中村君という名前と、それぞれのイラストがあった。

 イラストは、かなり雑だったけど、誰だかわかるぐらいには、描かれていた。

 

 大石が

 「僕は、何を着るか分かった。イラスト上手いね。加藤さん。」

 と、イラストがあるだけで、ほっとした感じだった。

 

 真が、

 「じゃ、オレを含めた残りの4人は、鎧を着る武者でいいんだな、加藤。」

 加藤さんは、また、ルーズリーフの紙を佐川に渡した。

 

 佐川が、

 「工藤君、清水君、村上君、田中君は、武者です。ただし、イラストは、後だそうですよ。長である侍大将以外は、同じ扱いです」

 

 真が、

 「加藤、ふざけてんじゃねぇぞ!ちゃんと・・・!」

 

 加藤さんに、怒鳴ると、

 女子から

 「工藤、加藤さんは今、忙しいの」

 

 「私たちのイラストを描いているんだから」

 

 「男子は後でいいでしょ」

 女子みんなで、工藤から加藤さんを守っていた。

 

 15分ぐらい経っただろうか、女子は全員目を輝かせてやる気になっていた。

 いったいどんなイラストを描いたんだろう。

 

 末広さんが、黒板に、

 それぞれの衣装を着る女子の名前を書きだした。

 

 ・うちき:普段着

  我妻さん、柴田さん、須見さん、大矢さん、末広さん

 ・壺装束つぼしょうぞく:外出着

  山口さん、宗方さん、伊吹さん、小西さん

 ・巫女

  加藤さん、佐々木さん、麻生さん、栗田さん、岡部さん

 ・白拍子

  具志堅さん

 

 だった。男子も、なぜかみんな納得していた。

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