第41話 衣装を決めよう!③

【宮城翔】


 真が、当然のように、

 「もう、白拍子しらびょうしは、具志堅で決まりだな。」

 「加藤、いいセンスしてるぜ。性格は・・・まいいか。デザインは、センスだぜ、センス。」

 と言った。


 女子の中から、

 「えっ・・・。どうして、白拍子しらびょうしは具志堅さんに、決まりなの。」

 という声が聞こえてきた。

 

 「翔も、末広も、このイラスト見てみろよ。」

 俺と末広さんは、加藤さんの描いた白拍子のイラストを見た。それは、黒鉛筆で描かれたイラストだった。

 

 烏帽子えぼしを被り、手を揃えて立っている、白拍子しらびょうしだった。顔をよく見ると、それは、まさしく笑顔の具志堅さんだった。

 

 末広さんは、前の方の女子に紙を渡して、

 「みんなで、回して良く見てみて。」

 

 女子から、

 「具志堅さん、白拍子しらびょうし、似合うよ。きっと。」

 「具志堅さん、神秘的な感じあるよね。」

 

 男子からも、

 「具志堅さん、かわいいよな。」

 という声が聞こえてきた。

 

 「今更気付いたのか。そうなったのは最近だと思うがな。」

 真だけ「当然じゃないか」という反応をしていた。

 へぇ、よく見てるな。

 

 具志堅さんは、顔を真っ赤にして、下を向いていた。

 そんな中、女子から

 

 「私、巫女さんの服、着てみたかったんだよね。」

 

 「いいよね、巫女さん」


 「でも、私、小袖こそで嫌だな。」


 「そうだよね。地味すぎるよね。」


 「壺装束つぼしょうぞくとかうちきも、いいよね。」


 「それいい!」

 という声が出てきた。


 「仕方がないわね。じゃあ、女子は小袖こそでは無しということでいいわね。無理にやっても不満が出るだけだろうし。」

 末広さん、いい判断だな。


 「でもよ、女子に普通のやつ、庶民の役がいなくなったら、人数的におかしくねぇか。」


 「そこは、男子で、庶民が着る筒袖つつそで括袴くくりばかまの役を増やすわ。」


 「仕方ねぇな。女子共にウダウダ言われるのも面倒だしな。」

 「そして何よりも、女子の庶民の服より、女子の綺麗な衣装をたくさん作れる方がオレの実力を発揮しやすいしな!!指が鳴るぜ!!」

 真が、指の関節を高速で何十回も曲げながら言っていた。

 真、それ「腕」だぞ。


 「佐川は、庶民は決定だな。」

 真は、迷いなく言っていた。


 「待ちなさい!!なぜ、ワタシが庶民の筒袖つつそで括袴くくりばかまなのですか!!仮にもこのクラスの顔たる委員長ですよ!!せめて、直垂ひたたれでしょう!!」


 「佐川は庶民がお似合い。」

 女子から声が聞こえてきた。


 「大体ですね!!イラストも出来上がってないのに決めるというのは早計…!!」


 「イラストならできてるぞ。具志堅からもらった。加藤が描いたんだってさ。ホラ。」

 真が、加藤さんが描いた庶民が着る筒袖つつそで括袴くくりばかまのイラストを佐川に渡した。


 「これは…。ワタシの顔ですね。ただ、こう、もう少しインパクトが欲しいところですね。」

 

 女子から、

 「佐川は、存在自体がインパクトあるよね。」


 「変な意味でね。」

 という声が聞こえてきた。


 「何言ってんだ。あるだろインパクト。これとか。」

 加藤さんの描いたイラストの左胸の所に『長』という字を○で囲っているものが書いてあった。


 「インパクトあるだろ。武術漫画の道着みたいでさ。」


 「言われてみればそうですが、なぜこのデザインにしたのでしょうか。」

 それは俺も思っていたことだ。


 「加藤さんが言うには、委員長の『長』だそうです。小さく『委員』ともあります。」


 「そうなのか?」

 俺も、もう一度見てみる。あ、本当にあった。すごく小さいけど。


 「それにね、佐川が庶民の役をやってくれると他の男子たちも『委員長がやるなら俺たちもやってやるか』って納得するのよ。」

 末広さんが助け舟を出した。

 

 「なるほど。そうですか。私は、庶民のおさと言うことですね。でしたらワタシとしても異論はありませんね!!」


 他の男子たちも、ムリに「そうだそうだ!」と同意をするように、首を縦に振っていた。

 佐川、いいのか?それで?

 

 俺は、着る衣装毎に、人数を書いた。

 ①  武家の階級 

   ・男子:

     直垂ひたたれ:普段着 3人

     甲冑かっちゅう:戦 5人 

   ・女子:

     うちき:普段着 5人

     壺装束つぼしょうぞく:外出着 4人


 ② 庶民

   ・男子:筒袖つつそで括袴くくりばかま 7人。長:佐川

   ・女子:小袖こそで なし


 ③ その他

   ・巫女 5人

   ・白拍子 1人、具志堅さん

 

 それぞれの衣装に人数を割り当てるのは、すぐに終わった。

 

 末広さんが、

 「これから、誰がどの衣装を着るか決めるね。」と言った。

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