第38話 やるぞ!仮装行列! その②
【宮城翔】
末広さんが、
「2組も、3組もどちらかと言うと、西洋風ですよね。私たちは、和風でいくのはどうでしょう。」
俺は、それほど自己主張をするタイプではないが、何か、俺を突き動かす声が聞こえきた。
「先生、平安後期から鎌倉時代の仮装ではどうでしょう。今、授業で習っているところでもありますし、貴族の世から武士の世に変わるところで服装も大きく変わってきましたよ。」
真が、
「武者行列か!かっこいいな!!鎧、着こなしてやるぜ!!」
「男子はいいけど、女子はどうするの?」
女子からの声が聞こえてきた。
俺は、
「『
「そう言われてもどんなものか、イメージつかないよね。」
「ちょっと待って。」
そういうと、今村先生は、ノートPCを教室の電子黒板に接続すると、インターネットで検索して、そのイメージ図や写真を出してきた。
「あ、見たことある。」
「思ったよりかわいい。これならいいかも。」
俺は、続けた。
「それに、神社の巫女さんの服装の原型もこの時代から始まったと言われているよ。一説では、その巫女さんから
今村先生が、巫女さんや白拍子の写真やイメージ図を、次々に電子黒板に映し出した。
「え、かわいい!これ、いい!これやりたい!」
女子たちが俄然やる気になってきた。
末広さんが、
「華やかなさだけではいけないと思います。もっと、その時代のリアリティも出したほうがいいと思います。」
佐川が、
「末広さんは、言う通りです!庶民の服装も同時に仮装しましょう!そうすることで、そのコントラストが強調され、リアリティが増すのです!」
今村先生の声が乗ってきた。
「運動会は、あくまで授業の一環と言う意味でも、趣旨に合っている。みんないいぞ。」
そこに急に、真が、
「今村!オレの頭の中でイマジネーションがグツグツと湧き上がってきたぜ!今にも爆発しそうなくらいだ!!」
そういうと、勝手に前に出てきて、PCで検索をして、
「フンッ!!」
無駄に勢いをつけて
「どうだ!!これがオレの思い浮かべる巫女服だ!!」
と電子黒板に表示をした。
すると、女子から
「これって、あの美少女戦隊の巫女さん隊員の服じゃない。キモイ。」
「もっと、いいの出してよ。」
「これって、巫女服じゃなくて、戦闘服だよね。」
と不満の声が続出していた。
「なんだと!!これぞ!!巫女服じゃねぇか!!ワビサビじゃねぇか!!いざ!鎌倉文化!!」
末広さんが、
「これは、却下。」
「なぜだ!!」
末広さんは、真を完全に無視した。
真が、心底「訳が分からない!」という顔をしていた。
真、いろいろと間違っているぞ。
今村先生が、思い出したように、
「工藤、巫女さんの服で、テンションが上がるのもいいけど、もう少し歴史の小テスト、いい点を取って欲しかったな。」
「悪いな。今村、オレは、過去よりも未来に思いを馳せる男なのさ!!だから、過去は振り返らないのさ。ただ、今、この瞬間から過去の服には興味がでてきたぜ!」
無駄にいい笑顔でサムズアップをしていた。
「前から思っていたけど、工藤って佐川とは別の意味で頭おかしいよね。」
「かっこいいこと言っているつもりかな。すごく滑ってるよね。」
真への女子からの視線が少し冷たくなっていた。
今村先生は、苦笑いをしながら、
「いずれにしろ、歴史に興味をもったことは嬉しいよ。」
と応えた。
「動機が不純だけどね。」
末広さんが鋭いツッコミをしていた。
佐川が意を決したように立ち上がって、
「皆さん!ご唱和下さい!!1・・・」と叫ぼうとすると、
今村先生は、佐川の口をとっさに手で押さえて、
「あまり大きな声を出さないでくれ。」
と小声で言った。
すると、具志堅さんが、
「腹くくりなさい。」
まるで部下を諭すように言った。
今村先生は、びっくりしたようだったが、
「はい、わかりました。」
と素直に答えていた。
え、どっちが先生?また、おばぁだな。
「1組は、勝つぞ!」
今村先生は、勇気を振り絞って叫んだ。
職員室で大丈夫か、今村先生。
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