第27話 おばぁ、沖縄に帰る
【具志堅沙苗】
空港に着いたときは、10時を少し過ぎた時間でした。
「翔、おみやげを買いたいさ。」
そういうと、私たち三人は、お土産屋さんに入ると、麦ちゃんは、スイーツなどのお土産を3つの大きな袋にいっぱい買っていました。
宮城君が、
「会社の人たちや、近所の人たちの分もあるからね。いつも、お土産は、いっぱい買うんだよね。東京に来た時もそうだったでしょ。」
と、慣れたように話してくれました。
「翔と沙苗ちゃんも、何かお土産選んで。」
「私も、ですか。」
「そうさ、好きなもの選びなさい!」
「具志堅さん、遠慮しない方がいいよ。そっちの方がおばぁも喜ぶし。」
そういうと、宮城君は、新宿チョコバナナという、スイーツを買ってもらっていました。
私も、同じものを買ってもらいました。
「まだ、11時だね。じゃ、食べに行こうかね。」
「おばぁ、まずは肉だね。クイーンホストだね。」
「そうさ、ステーキ食べよう。」
まるで、東京に来た時と同じです。思わず笑ってしまいました。
麦ちゃんは、前と同じワンポンドステーキ定食を注文しました。
宮城君は、カツカレーを注文していました。
私も、カツカレーを注文しました。
食事を取りながら、
「おばぁ、5月にさ、運動会があるんだよ。来たら。」
宮城君が、言いました。
私も、
「そうですよ。私も来て欲しいです。」
「そうだね、5月、忙しんだよ。展示会の準備があるからね。来れるといいね。」
麦ちゃんは、しんみりと言いました。
「私が、出る競技はあるかね。翔が、小学生の時は、あったけどね、PTAのリレーとかさ。中学は、なかったよね。」
「うちの中学もないです。」
「そうだよね。運動会、好きなんだけどね。出ないとつまらないね。」
「おばぁは運動会好きだもんな。というより、勝負事全部。」
「その通りさ。」
おばぁは、
「翔も、沙苗ちゃんも、楽しみながら、勝つんだよ。負けないよ。」
と、麦ちゃんは、私の目の前で、拳を握って見せました。
「はい、がんばります。」
思わず、私も拳を握りました。
「翔は。」
「もちろんだよ。おばぁ。」
宮城君は、拳を握って、麦ちゃんと拳を突き合わせていました。
食事を食べ終わったころには、もう12時をすこし超えていました。
1時15分の出発の飛行機です。
「もう、1時間前さね。搭乗手続きをして、保安検査すませようね。もっと、食べたいけどさ。私は、慌てん坊だから、時間ギリギリが好きじゃないんだよね。」
麦ちゃんは、そういうと、搭乗手続きを済ませて、スーツケースを預けてきました。
保安検査場の前に来ると、これで、麦ちゃんとお別れかと思うと、心が麦ちゃんに持っていかれるような気がしてきました。
麦ちゃんは、
「沙苗ちゃん、この私が作ったお守りをあげようね。」
麦ちゃんが渡してくれたお守りは、濃い赤い色の生地に、金色で表に『沙苗』、裏に『麦子』と刺繍で入れてありました。
「いつも、肌身離さず持っているんだよ。守ってくれるからね。」
「ありがとうございます。綺麗な赤ですね。私、赤好きなんです。」
「翔、翔にもお守り。」
「え、おばぁが、沖縄に居たとき、貰ったことないよ。」
「近かったからね。あげる必要がなかったからね。東京は、遠いさね。」
そういうと、麦ちゃんは、白の布地に同じく金色で表に『翔』、裏に『麦子』と刺繍が入ったお守りを、宮城君に渡しました。
麦ちゃんは、私たち二人にお守りを渡すと、保安検査場に入っていきました。
私と宮城君は、検査が終わって、検査場を出たところで、麦ちゃんに手を振りました。
麦ちゃんも元気よく手を振っていました。
宮城君は、かなり寂しそうでしたが、
「なんか、また、すぐに会う気がする。」
「私も、すぐに会える気がします。」
「やっぱり、具志堅さんもそう思った?」
と、二人で、顔を見合わせて笑いました。
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