第24話 霊への気持ち その3

【具志堅沙苗】

 「後さ、健勝さんさ、膝は、気をつけなさいってよ。智子さんが言っていたよ。医者に行った方がいいってよ。」

 

 一瞬、御祖父おじいちゃんの顔が曇りました。

 「誰か、俺のおふくろのことをこのユタに話したのか。」

 

 お姉ちゃんは、

 「私たち話していないよ。そんな時間なかったし。」

 

 「私も同じです。」

 

 「沙苗が、話したの?」

 

 「私も話していないよ。ただ、さっき麦ちゃんから麦ちゃんの夢に、現れたと聞いたから。」

 

 「俺のおふくろが、なぜ?」

 

 「え、自分の孫を助けて欲しいからに決まっているさ。後、健勝さん、アンタもあのバカタレのおかげで苦労したって言っていたよ。」

 

 「また、悪いけどさ、智子さんが妹さんにあげようとした真珠のネックレスあるよね。覚えているよね。」

 

 御祖父おじいちゃんは、更に驚いた顔で、麦ちゃんを見ていました。

 

 「あれ、あのバカタレが美奈子さんのものを盗んで、智子さんにあげたものなわけさ。智子さんも知らなかったみたいだけど。」

 

 「あのネックレス、あの人からおふくろがもらったものなので、妹も結局身に着けるのを嫌がって、今、おふくろの仏壇の下の引き出しにありますよ。」

 

 「そうねぇ、それ、貴子さんにあげてね。美奈子さんにお願いされたさ。」

 

 「え、あの霊から。」

 

 「ごめんって、これからあのネックレスを身に着けて欲しいってさ。」

 

 徐々に、御祖父おじいちゃんの態度が、変わってきました。

 ただ、やはり麦ちゃんのことは、苦手なようです。

 

 「分かりました。貴子にネックレスを渡します。」

 「何か、他におふくろが話していましたか。」

 

 「息子さんの奥さんと仲良くしなさいと言っていたね。もうすぐ妊娠するってさ。これぐらいだね。」

 

 「…そうですか。それはおめでたいですな。」

 御祖父おじいちゃんは、その時には麦ちゃんの話を真剣に聞いていました。

 

 「分かりました。じゃ、御祖父おじいちゃん、帰るね。」と言いました。

 

 私が、

 「送っていくね。」と言うと、

 「玄関まででいいよ。」

 と、言われました。

 

 私は、御祖父おじいちゃんといっしょに、リビングルームを出ていきました。

 

 ドアを閉めると、

 「あのユタさんは、不思議な人だな。」

 

 「麦ちゃんが言っていること、当たっているの?」

 

 「あぁ。」

 そう言って、御祖父おじいちゃんは、帰っていきました。

 

 リビングに戻って、時間を確認するとすでに、6時を過ぎていました。

 

 お父さんに、

 「夕飯どうする」と聞くと、


 「そうかムーバーフードでも頼もうか」


 すると、お姉ちゃんが、麦ちゃんに、

 「麦ちゃんはたくさん食べると聞きました。遠慮しないでくださいね。」


 「ありがとう、分かったさ。ただね、霊に接する前は、いっぱい食べるけど、もう終わったしそんなには、要らないよ。」


 「でも、遠慮はなさらないでください。」

 お父さんが、言いました。


 「あの、止めといたほうがいいですよ。」

 宮城君が慌てて止めようとします。


 「いやいや、これぐらいはしないとね。」


 「そこまで言うのでしたらいいですけど。ものすごく食べますよ。祖母は。」


 「そうですね、それでは、お寿司を2人前とLサイズのピザを5枚お願いします。」


 「そんなに!…いいでしょう、分かりました!」

 お父さんもお姉ちゃんも驚いた様子でしたが、空港の時の麦ちゃんを見ている私は何とも思いませんでした。


 結局、みんなでお寿司を7人前、そして、Lサイズのピザを10枚注文しました。


 注文した食事が来る前に、私は、お父さんに、駐車場の下に埋まっている美那子さんの遺骨を取り出して、永代供養をしたいと話しました。

 お父さんは、最初は、驚いていましたが、すぐに心地よく承諾してくれました。


 お姉ちゃんが、

 「永代供養の話、御祖父おじいちゃんに相談しなくていいの?」

 と言うと、お父さんが、

 「反対はしないと思うけど、『お金は出さない』と怒ると思うな。沙苗もそう思ったんだろう。」


 「うん」


 「そうだね、きっと怒るよね。墓ができてから、知らせてもいいかも。」

 お姉ちゃんは言いました。


 その様子をみて、麦ちゃんが

 「この家族には、いいことがあるよ。貴子さんもすぐに良くなるからね。」

 と言ってくれました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る