第2話 おばぁ、参上。 その2
放課後がきてしまった。
俺は、掃除当番だった。
あの3人組は、掃除当番ではなかったのか、すでに教室にはいなかった。
校門を出たところにも、あいつらは、いなかった。
(今日は、いないのか。良かった。)
俺は、少し安心した。
今朝、あいつらが俺を待っていた十字路の駐車場が見えた。
あいつらは、そこにはいなかった。
今日は、大丈夫だ。
もしかして、体育館の裏で待っているのか。
行っても、行かなくも虐められる。
誰もいない所で会うと、何をされるか分からない。
体育館の裏に行かない方が、いい。
俺は、無視をすることに決めた。
家の近くのコンビニが見えてきた。
コンビニを右に曲がって、坂を上ると家だ。
コンビニを過ぎると、
「宮城、いっしょに帰ろうぜ。」
と声がした。
そう言って、工藤が俺の首に手を回した。
あいつらは、コンビニの中で。俺を待ち構えていたようだ。
そして2人が俺を囲んだ。
俺は、すぐそばの路地へ無理やり引き込まれた。
周りを見ても、誰も助けてはくれない。
「宮城、いい加減にしろよ。」
工藤が俺の首に回した手を、強く締めながら言った。
「体育館の裏に来るように、約束したよな。」
村田が続けた、
「俺らも、体育館の裏に行っていないけどね。」
奴らは、ケラケラと笑った。
(何が、楽しい?)
「俺は、そんな約束していない。」
「ま、いいや、早く金を渡せよ。」
「いやだ!絶対にお前たちには、お金は渡さない。」
俺は、工藤を睨んで、言った。
「てめぇ!」
工藤が、俺を殴ろうと、腕を振り上げた。
「おばぁっ!」
大きな声で、叫んでしまった。
その瞬間、工藤は吹っ飛んで、赤い自動販売機に、叩きつけられていた。
(えっ?)
スカートから足が伸びて、工藤が蹴り飛ばされたのが、見えた気がする。
驚いて工藤を見ていた村田は、手刀でのどを突かれてうずくまってしまった。
更に何か黒い影が一回転すると、藤田の顔に掌底を当てた。
3人とも、地面にうずくまっていた。
そこには、俺の学校の女子の制服を着た生徒が立っていた。
更に、その3人に追い打ちをかけるように、その女子は、左の足の膝を蹴っていた。
「うげぇ」
と3人とも、もがいていた。
ここまで、あっと言う間の出来事だった。
(誰だ)
その女子は、
「これで、このヤナワラバー(悪ガキ)たちも、明日は、足を引きずって歩くさ。上等さ。」
沖縄の方言を少し混ぜた、言葉で話した。
「人を虐めると、大変な目に会うことが分かると思うさ。」
そこに立っていたのは、黒いゴムで長い髪の毛を後ろで束ねた、女子だった。
勝気そうなクリっとした大きな目を持った美少女だった。
また、制服のスカートはたくしあげられていて、両足の間のスカートの裾の辺りを、ピンのようなもので、閉じていた。
スカートは、まるで半ズボンのようだった。
その子は、勝ち誇ったように、両手を腰に当てて、不敵な笑いを浮かべながら、三人を見ていた。
倒れている工藤が、
「お前誰だ。覚えとけよ。」
と苦しそうにと言った。
「それは、あんたさ。」
と言って、その子は、工藤の溝内に蹴りをいれた。
「ついでに。」
と言って、他の2人にも溝内に蹴りを食らわしていた。
「ヨーバー(弱虫)のくせに。次は、歩けないようにするよ。」
と笑っていた。
(こいつ、ちょっと怖い。)
俺は、思った。
「時間さ、早く帰らないと。」
「後で、電話かけるさ。翔」
その女子は、まるで髪の毛に針金が入っているかのように、ピンと黒髪を立たせながら、チーターのように駆けていった。
(後で、電話をする?)
(あの子、俺の携帯番号知っているのか?いったい誰?)
ただ、俺には、電話が必ず来るという確信があった。
俺は、這いつくばっている3人組を残して、家に帰っていった。
夜の8時になったころだった。
携帯がなった。
沖縄に住んでいる俺のおばぁだった。
「翔、明日からは、もうあのヤナワラバー(悪ガキ)たちはこないよ。安心していいさ。」
「やっぱり、おばぁか。」
「ありがとう、おばぁ。」
思わず、笑ってしまった。
「でも、あの子は、俺と同じくらいの年だったよ。おばぁじゃなかったよ。」
「おばぁ、何をしたの?」
「憑依したさ。」
「憑依した?」
俺のおばぁは、沖縄で泡盛の酒造会社の社長をしていたる。。
それだけでなく、頼まれたときは、ユタもしていた。
ユタとは、沖縄に古くからいる霊媒師だ。沖縄では、神人(カミンチュ)、御願者(ウグヮンサー)とも呼ばれている人のたちだ。
ユタは、幽霊を見ることができ、霊と話したり、場合によっては除霊をしたりもする。更に、その人の運勢も見えたりする。
但し、多くのユタにとっては、沖縄の宗教的な行事を取り計らうことが主な仕事になっている。
おばぁは、言った。
「普通は、憑依はできないよ。」
「ただ沙苗ちゃんは、なんか私とさ、霊的な繋がりが強いみたいさ。」
「でさ、泣いて助けを求めているわけさ。」
「泣いて、助け?」
「おばぁ、沙苗ちゃんって、誰か分かっているの?苗字は?」
「苗字までは、分からん。」
「ただ、元々の祖先が沖縄の人だからね。後、翔のこと知っているみたいだから、 同じクラスじゃないかね。」
おばぁは、いつも細かいことはあまり気にしない。
直感的に言うだけだが、恐ろしいほどによく当たる。
「沙苗ちゃんと明日話をしてね。今週の土曜日に行くよって。」
「今週の土曜日に、東京に来るの?」
おばぁは、電話を切っていた。
おばぁは、言いたいことを話すと、いつもすぐに電話を切ってしまう。
「なぜ、東京に来るのか、いつ飛行機が到着するのか、聞きたかったのに。」
俺は、苦笑いをした。
おばぁの声を聞くだけで、心が軽くなった。
「おばぁが、東京に来る」
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