第21話 いきさつがわからないまま
言いながら持ってきた風呂敷包みを開ける。
慌てて今置いたばかりのコーヒーを避けながら、西口が
「立派なもんですなぁ」
と、出された木箱の箱書きを見て感嘆の声をあげる。
頷きながら、蓋を開けようとする平田に西口が
「中を見せていただいてから、お話しをするのもなんなんで。」
と、やんわりと制し
「電話では、どうしていいか分からんかったんで、わざわざお越しいただいたんです。
けど、平田さんのお父さんのご遺言で、うちがこのお雛さんでしたっけ。
これを貰えるというのがぴんとこんのですわ。」
平田が
「実は、儂らもいきさつは知らんのです。
親父が
書付があったんですわ。」
「え、ほんまですか?」
西口の問いかけに、平田と竜樹の二人が頷く。
頷いてから竜樹は、平田の言った『儂ら』は、平田と麻由美のことだが、西口には平田と竜樹だと勘違いされたかな?
と、心の中で苦笑した。
そんなことも全く気にもかけないで平田が
「ええ、お恥ずかしいことで。
それで、まぁ、こちらへ伺うのが遅なってしもて。」
と頭を下げる。
腕組みをして、ドスンとソファの背もたれに背中を預けた西口が
「まぁそれやったら、そうなりますわな。
私かてそうなりますわ。」
と言ったあとで、平田の誠実な口調に納得できたのか
「先代さんと、親父との間にご縁があったみたいなことは知ってはいたんですが。」
と始めると、平田も
「儂もです。」
と口をはさむ。
うんうんと頷き
「初めてお会いした人に申し訳ないけど、実は」
と、少し
「私と親父は、血が繋がってないんです。」
と言った。
突然の私的な話しに、平田と竜樹は戸惑いを隠せなかった。
それでも次の言葉を探していると、その気配を感じた西口が
「いや、すんません。
この辺は、田舎なもんで近所のもんも皆知ってまして。
子どもの時には、心ないことを言われたりしたもんやから、こんな年になってもつい言われる前に言ってしもて。」
と笑う。
「ご苦労なさったんですね。」
と、平田が同情した面持ちで言う。
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