第3話 捜索隊

 十三騎を率いて、パイポ村を訪れた。

 クルポトド山脈の麓にある住民三百足らずの貧相な農村だ。

 中央の広場に馬を乗り入れると、先行していたガイガンが村の長を引き連れて現れた。


「・・・・・」


 身の丈2メートルを超すガイガンの隣で震えている初老の男は、馬上のゾーイから目をそむけている。

 ゾーイは馬を降り、男の前に立った。


「王国騎士団八番隊隊長、キリク・ゾーイです。このような形で面会することを許してほしい」


 男がおずおずとゾーイに顔を向ける。村の長であるにも関わらず、ひどくせている。よほど貧しい村なのだろう。


「この、パイポ村の長をしてる、ゲバイと申します」


「ゲバイ殿か。忙しい中、すまんな」


「構いません。今年の麦が少ないのは天気のせいでして、どうぞ村の隅から隅まで探してみてやって下さい。どこにも隠したりしてませんで」


「心配しなくていい。税の取り立てに来たわけではない。あなた方に迷惑をかけるつもりもない」


 ゲバイの隣に立ち、肩に手を当てて歩き出す。よほどガイガンが恐ろしかったのか、ゲバイの表情が少しだけ和らいだ。


「人を探している。少女だ。名前はリュア。金髪で碧い瞳、抜けるように白い肌をしている。人目をく容姿だから、見れば必ず解る」


「そ、そんな女がいたら、すぐに噂になります。こ、ここにはいないです」


「そうだろうな。だが、怪我をしている場合がある。どこかでかくまわれていることも、誰かに監禁されている可能性だってある」


「監禁って、そんな。どうぞ、隅々まで調べて下さい」


「慌てるな。わたしは情報が欲しいんだ。協力してくれるな?」


「へい、できる限りのことはさせていただきます」


「ありがとう。有益な情報なら、わたしもきみ達にできる限りのことをすると約束しよう。税の取り立ても免じる」


「ほ、本当ですか?ありがてぇです」


 ゾーイが左手を差し出すと、ガイガンがとうで編んだかごを手渡してきた。


「鳩が入っている。リュアを見たら鳩を飛ばせ。すぐに我々が駆けつける」


 鳩には全て足環が付いている。色分けしているから、どこから飛んできた鳩かはすぐに知れる。


 差し出した籠をゲバイが両手で抱える。


「頼んだぞ。ここだけではない。川沿いの集落にも目を配ってくれ。見つけてくれたなら、決して後悔はさせない」


 何度もうなずき、頭を下げ、ゲバイは広場から姿を消した。


「未だ情報は無しか?」


 背後に立つガイガンに訊ねた。返事は無い。喋る必要が無ければ、ガイガンは決して口を利かない。つまり新たな情報は無いということだ。


「川沿いを捜索した部隊が下流で馬車の残骸を見つけた。リュア様が亡くなられているのなら、どこかで遺体が見つかる。それが無いとなると」


 リュアは王国第三王女だ。ビエニスタン王国のデュクス王は男児に恵まれなかった。三人の王女のいずれかが王位を継ぐことになる。そのリュアが行方不明となれば、例え死体であっても探し出さねばならない。


「どこかに移動している可能性がある。捜索範囲を広げねばなるまい」


 王位継承をめぐり、各王女にはそれぞれの思惑を持った有力者たちが付いている。そういった連中が影で動いている可能性がある限り、王国の総力を挙げてリュアを捜索することは躊躇ためらわれる。

 捜索に掛かる莫大な費用を理由にリュアの失脚を狙う者もいるだろうし、場合によってはリュアを亡き者とする輩が現れるかもしれない。

 今はまだ、ことを大事にはしたくない。

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