第25話

考えても、考えても、この答えにしか辿り着かなかった。


翌日、「会いたい」とラインを送ると日野くんは飛ぶようにいつもの場所にやってきた。


「待たせました?」


「ううん、全然。ありがとう、来てくれて」


「俺はいつだって相原先輩に会いたいですからね」


嬉しいはずの言葉なのに、今はただただ胸が痛かった。


こんな素敵な彼氏と、私はさよならしようとしている。


「…日野くん、あのね。私ね、日野くんのこと、ちゃんと気になってた。一緒にいたらドキドキするし、幸せな気持ちにもたくさんなったの。日野くんは私にまっすぐ思いを伝えてくれて、向き合ってくれて…それなのに私、ずっと好きだった人がまだ心の中にいるの。簡単に消せないの。

今、日野くんと付き合ってるのに…日野くんみたいにまっすぐな気持ちで向き合えてない自分がすごく嫌なのっ」


話しながら、ポロポロと涙が溢れ落ちる。


きっと泣きたいのは日野くんの方なのに、私は最後の最後までなんて自分勝手なのだろう。


「…相原先輩はどうしたいの?」


寂しそうに言うその顔を直視できない。


「…っっ…私。こんな気持ちのままじゃ、日野くんとはもう無理かもしれない。本当にごめんなさい。」


「…そっか、分かった。きっと振られるのかなって正直覚悟してました。うん、じゃあ、俺たち別れましょう。短かったけど楽しかったです。相原先輩、俺と付き合ってくれてありがとう。」


潔くその場を去っていく日野くんの姿が霞んで見える。


「日野くん…っ…ごめんねっ」


日野くんは決して振り返らなかった。 


どこまでも優しい日野くんを、私は振ってしまったという事実が胸を締め付ける。


「ごめんねっ…ごめんねっ」


振ったのは私の方なのに、いつまでも涙が止まることはなかった。


こうして私と日野くんは、たったの3週間で別れてしまったのだった。



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