第33話

「みんな頑張ってたから悔しいね。」


残念ながら、なんの賞も取れずに中学最後の合唱コンクールは幕を閉じた。


涙を流す女子とそれを慰める男子、見守る先生。


クラスで衝突した時もあったが、それを乗り越えたことで絆はさらに深まっていた。


「にしても、相原のコメント泣けたわ!」


「わかるー!私も歌う前に泣きそうになっちゃったよ〜」


言葉にすることが苦手な私が一生懸命紡いだ言葉が、クラスの仲間にしっかりと届いていた喜びに心も体も包まれていた。


そして、その日の夜だった。


「今日はお疲れ様でした。」


日野くんと別れて1ヶ月が経つが、別れてから初めてのラインだった。


少しだけ驚いて、速やかに返事を送る。

 

「お疲れ様。日野くん、歌声委員だったんだね。

まさかあそこにいるとは思わなくてビックリした!」


「本当はやりたくなかったんですけど(笑)それより、コメンテーターすごい良かったです。」


いつの間にか色づいている紅葉のように、心が赤く染まっていく。


この日から、止まっていた日野くんとの時間がまた動き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る