第2話

 僕達は、住んでいた星に隕石が衝突するのが分かって、宇宙船を作って逃げ出した。


 逃げるあてなんて全く無いまま始まった宇宙の旅の目的は、すぐに決まった。


 僕達が住める別の星を探す事だ。


 広い宇宙を旅して行けば、僕達が住める惑星がどこかにあるはずだ。


 この船は大勢を乗せ、今日も宇宙のどこかを航海している。




 航海長の僕は、今日も艦橋ブリッジに一人で居て、彼女の到着を待っている。


「艦長、艦橋に入室ブリッジイン


「航海長、状況は?」


 自動ドアが開くとすぐ、凛々しい声が飛ぶ。


 今日の彼女は、登山用のウェアを身に着けている。


 カラフルな服とリュック。ストックも持っている。どこに行っていたのだろうか? サングラスをかけたまま杖を突いて入室して来る姿は、ちょっと面白くて微笑ましい。


「この船は、とても広いからな。中央居住区画にある山に登って、リフレッシュしていたんだ。火口を覗くと、エネルギー炉の炉心が見えていたよ」


 今日も休暇の途中で呼び出されてしまった彼女は、艦長席に座った。


「正面の敵は、宇宙火蟻か」


「大きさは、二千五百メートル程です。力が凄いです。嚙まれたら艦が壊れます。艦ごと巣に持ち帰られたら大変です。それに、これも毒針を持っています。それと、艦長…。今日もお綺麗です」


 艦長は、今日も帽子を深くかぶり直して正面モニターの方を向いた。


「暗黒物質エネルギー砲、準備」


「了解。エネルギー充填率1%、2%」


「発射」


「は、発射」


きゅいん きゅいん きゅいん どおーーーーん


「目標に命中。破壊しました」


「よし」


 艦長の安堵の声の後に響くのは、オペレーターロボットの声。


「暗黒物質エネルギー使用により時空間への影響発生。時空間衝撃波が発生しました。到達まで七、六、五…」


「時空間衝撃に備え」


「了解」


がたがたがたがた どーん


 僕は、今日も危うく転ぶところだった。


「艦長、大丈夫ですか? あ、また艦長が居ない。うわ、今回は服だけ残ってる…。えーー」


「時空間衝撃波により空間移動テレポート及び時間移動タイムワープ発生。位置は不明。到達予想時期は、約二千年前。続けて、衝撃波の反動波の到達まで七、六、五…」


「またですか。艦長…」


がたがたがたがた どーん


 僕は、また危うく転ぶところだった。


「どうした? 航海長」


「艦長、無事だったんですね?」


「うむ。今回は過去に行っていたみたいだ」


「お体は大丈夫ですか?」


「大丈夫だ。これを君にあげよう」


「何ですか、この石? エメラルドですか?」


「行ったのは暑い国だった。現地の者は、エジプトと言っていたな。下着姿だったので、近くにあった絨毯に包まって隠れていたんだが…。見つかってしまってな。怒られるかと思ったが、これをくれたんだ」


「はあ…」


「そのアイディアもらったわ。私も絨毯に包まって行く事にするわ。きっと彼は驚くわ。これは、アイディアのお礼だから…。そんな風に言っていたな」


「それって誰なんです?」


「さあな。絶世の美女とは、まさに彼女の事を指すんだろう。そんな人だった…。あとな…」


「どうされました?」


「服を着るから、向こうを向いていてくれ」


「す、済みません」


「今回は平行世界パラレルワールド発生ありませんでした。艦長、艦橋を退室ブリッジアウト


 僕達の宇宙旅行は、今日も続く。

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