第18話 エルフ国・動乱篇 終幕
操られているエルフたちをスキル【女たらし】で撃退しながら走り抜けている俺たちは、大広間にたどり着いた。
「ボス戦の開始だ!」
「トモちゃん、がんばれー!」
俺たちが扉を開けると、待ち構えていたかのように色欲の大罪人が手下を連れて椅子に座っていた。
「くはっ、来ましたか。ゴミチン野郎」
「久しぶり、待った?」
この手の相手には、余裕の表情を崩さないことが重要なんだよな。
「待った、待った! お前をブッコロしたくてウズウズしてましたからね」
「相変わらず口が悪いな。おー怖い怖い!」
挑発的に笑うと、色欲の大罪人ピューブルは椅子からゆっくりと立ち上がる。その姿に、手下たちが一斉に動き出した。
「日花里! 美保!」
「怯むな、俺のスキルがあれば大丈夫だ!」
瞬時にスキル【女たらし】を発動すると、操られている者たちは次々と倒れていく。
「どうしたよ? 威勢がいいのは最初だけだったか!」
「くそがっ、相性最悪すぎんだよゴミチンがぁ」
色欲は険しい表情を浮かべ、手を振り上げると、周囲の空気が重くなっていく。
「させないよ!」
――瞬間、西城の剣がピューブルを捕らえた。
「ぐがっ……邪魔だ! ダブルキャスト・エアフレッジショット」
「坂本くん、今だ!」
大きな風の塊を放つが、西城はそれを剣で受け止め、ピューブルは大きな隙ができた。
「色欲、お前の魔法は確かに強力だ。けど……」
その言葉を聞いた色欲はにやりと笑い、手をかざすと、無数の幻想が現れる。
妖艶な女性たち、誘惑的な姿の影が俺たちを取り囲む。どれもが美しく、触れたらそのまま虜になりそうな、危険な魅力を放っていた。
「くはっ、これはただの幻じゃない。言ってみろ! けど、何だよぉぉ!」
「イヤだから。お前の能力、俺には効かないんだろ」
色欲の目の前でスキル【女たらし】を発動すると、色欲の幻影たちはボロボロと崩れ落ちていった。
「ふ、ふざけんな! なんなんだ……お前……!」
色欲は息を荒げて立ち上がるが、もうその目には自信のかけらも見えない。
「これで終わりだな、色欲!」
「まだだ! 色欲がこんなもので終わるわけがない!」
空間が爆発的に歪み、巨大な魔法の力が渦を巻き、俺たちを飲み込もうとした。
――しかし、そのときだった。
色欲の背後から大きな鎌が振り下ろされた。
「がぁぁ……」
ピューブルは痛みにうめき、地面に崩れ落ち体が崩壊していく。 だが、俺は見たことがあるその姿に驚愕した。
「レスティア!?」
どうなってるんだよ!? 俺の後ろにもレスティアがいるんだぞ!
「あら? 久しぶりですわね、トモヤさん」
「トモちゃん、あれ……私?」
どっちかと言うと、大鎌を持ってる方がしっくりくる。こっちのレスティアは雰囲気が柔らかすぎるからな。
「私から分離して、こんな所で何をしているの、虚飾?」
「分離? 虚飾? どういうことだよ、レスティア」
「さぁ? 勝手に出ていったのはその子ですわ。聞くならそっちですわ」
要領を得ないのは相変わらずだな。 久しぶりの再会だってのに!
「坂本くん、下がってくれ。この圧は凄まじいよ……」
「レスティアを相手にしたらダメだ。色欲は相性が良かったが、これは無理だ」
例えるなら、レベル1で魔王を相手にする感覚だな、こりゃ。
「こんなに隙を作ってくださって、トモヤさんには感謝しますわ。色欲は厄介でしたの」
「そうかい。そのお礼に聞きたいこと、山ほどあるんだけど?」
手足が震えるぜ。ここまで怖いとはな……
「そうですわね。一つだけならいいですわ」
「なら、お前は暴食まで復活させて、世界をぶっ壊すつもりか?」
レスティアはつまらなさそうに言った。
「いいえ。私は世界を救済するために、人間を絶滅させるのですわ」
「同じだろうが! おい、フィナベルはどうした!」
「一つだけですわよ。 では、さようならですわ。 トリプルキャスト・テレポート」
空間が歪むと、レスティアの姿が消えていった。
「どうなってるんだよ!」
「トモちゃん……」
レスティアを怖がらせちまったか。
「まっ、とりあえずは色欲を倒したってことでいいのか」
「とりあえず、驚異は去ったね」
レスティア……あいつとは絶対にどこかでぶつかり合うはずだ。その時までに何か対策を考えねーとな。
次話3月17日朝8時00分投稿です
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