第4話 水晶の少女と魔ソ汁

 拝啓、お父様お母様いかがお過ごしでしょうか? 俺は美女と地獄の底にいます。

 

 「さ、さっすが……レスティアさん半端ないっすわ!」

 「あら嬉しいわ、ありがとう」

 大鎌で騎士たちを屠って、その笑顔はめちゃくちゃ怖いんですけど。

 勇者より絶対チートだろ、裏ボスの雰囲気がプンプンしてる!

 

 「あのーレスティアさん? 下に向かってるみたいっすけど、出口向かってます?」

 「あら? この牢獄のさらに奥に行くのよ」

 なるほど! 牢獄の入口に行ったら騎士たちが待ち構えてるから、あえて奥に行って脱出するのか!

 

 「この牢獄の奥には千年前に魔物たちを率いて大陸を恐怖に陥れた大罪人が封印されているの。 私たちは彼女の封印を解きに行きますわ」

 違った! 全然違ったよ! もっとヤバかったんですけど!?

 

 「着いたわ」

 

 「ゴクリッッ」

 俺たちは城門のようにそびえ立つ扉の場所に着いた。 魔法陣が刻まれ鎖で厳重に封鎖されているのを見て俺は。

 


 「か……帰ってもよきですか?」

 「騎士さんに見つかったらぶった切られるわよ?」

 ほとんどアンタの仕業なんだよ! って、あぁん、俺のこと無視して扉開けないでよぉ。 待ってぇレスティアさまぁ!

 

 「……久しぶりね、強欲の大罪人フィナベル」

 「す、すげぇ」

 フィナベルと呼ばれた彼女が立っているのは、大きな水晶の中だった。

 光を浴びると髪は黄金のよう輝き、どこか遠くを見つめているその瞳は深い湖のような碧色をしていた。見つめ続けると引き込まれそうなるほどの綺麗さだった。

 あと、なんで裸?

 

 「さぁ、起きなさい」

 「お、おい……」

 レスティアが大きな水晶に触れるとパキパキとひび割れる音がなり砕け散る。 解き放たれた強欲の大罪人フィナベルは、ゆっくりと動きこちらに向かってくる。

 

 「ん……誰」

 「千年ぶりね、フィナベル」

 

 フィナベルは首を横にふり、俺に指を差してきた。

 

 「俺っすか?……レスティアさんの付き人?」

 

 「これ頂戴、レスティア」

 突如、レスティアはフィナベルの髪を掴み、顔を近づけ怒りを露わにしていた。

 

 「絶対に無理ですわ、これは私の!」 

 「私も欲しいの」

 お二人さんや、俺の意見とかは無視なんですかね!?

 

 「私は強欲、欲しいモノは絶対に手に入れたいの」

 「そうでしたわね。 なら、ブッ殺すだけですわ!」

 あばばばばば! レスティアさまがブチ切れていらっしゃられるわ! 炎がブワーってなってるんですけど!

 

 「ちょーーと待ってください! フィナベルさんでしたっけ? 友達とかでどうすっか」

 「友、達?」

 この裏ボスみたいな二人が、こんなところで戦ったら大陸が消滅もありえる! それは絶対に阻止しないとヤバイ。

 

 「ん、いいよ」

 「まぁ、それでいいですわ」

 もしかして世界救ったんじゃないか? 褒めていいよ、てか褒めろ!

 

 「フィナベルさん、とりあえずコレ着てください!」

 「ん?」

 ん? じゃねーんだよ! スッポンポンで全部見えててさすがに反応しちゃうから俺のブレザーを着ろってことだよ!


 「服着たことないんじゃないかしら? 千年前も着てなかったし」

 「それでも、着てくれ!」

 なんとかフィナベルは俺のブレザーを着てくれたわ、こんなの青少年保護育成条例に引っかかっちまうよ。

 

 「あの……レスティアさん、レスティアさん。 これは一体?」

 「凄いですわね、トモヤさんのことよほど気に入ったんじゃないかしら」 

 美少女が抱きついているのは嬉しいんだよ、千歳を超える超危険人物じゃなきゃな。

 

 「あれ? なんかズボンが濡れてる」

 「それはフィナベルの【魔ソ汁】ですわ」

 

 なんですか【魔ソ汁】って!? そんなの聞いたことないわ! 

 

 「私たち魔神は股から滴る【魔ソ汁】を擦り込んで所有物にマーキングするのですわ」

 アンタら頭おかしすぎるだろ!? もうツッコみすぎて疲れてきたよ、もうヤダ、早くベットでおねんねしたいよ。

 


 「ん……ふっ……ん、ん」

 


 「……フィナベルさんや、ズボンがビショビショなのですが」

 「ん、平気……」

 

 

 そうっすか……

 平気っすか、よかったですね……

 

 靴の中まで魔ソ汁が入ってきて気持ち悪いんですけどね。

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